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筋トレは何回すべき?最適な負荷・回数(レップ数)は8〜12回の理由

最適な負荷と回数
2秒で説明するなら

1セット8回〜12回できる重さで筋トレすると筋肥大する

筋トレを続けていくと、身体が大きくなっていきます。しかし、腕立て伏せや腹筋運動のような負荷の軽い運動を続けていても、筋肉はほとんど大きくなりません。

私は学生の頃、腕立て伏せを100回、腹筋を350回を2セット計700回やっていた時期がありましたが、”筋肥大”という意味においては効果は薄かったと、今になって思います。

実は、筋肉を成長させて逞しい身体になるためには、筋トレの負荷の調整がとても大切なのです。適切な負荷を使用することで、筋肥大の効果を高めることができます。

せっかく筋トレを頑張るなら、できるだけ効果的な方法を実践したいですよね。

そこで今回は、筋肥大に最も適した負荷について、次のポイントを詳しく解説していきます。

筋肥大を効率よく起こすために、最適な負荷と回数を知ろう

筋トレをすると筋肉が大きくなりますが、それは何故なのでしょうか?
筋肥大に必要なトレーニングの負荷やレップ数について考えるときは、まず筋肉が成長するメカニズムを知っておくと分かりやすくなります。

筋肥大がどうやって起こるのかを簡単に見ていきましょう。

筋肉に強い負荷を与えると、筋肉は強化される

生物が生き残るためには、常に周囲の環境に適応する必要があります。
環境が過酷になると、身体はそれに耐えられるように機能を強化します。
筋肉はそういった適応能力が特に高く、しかも早く起こるようになっています。

筋肉が出せる力は筋肉の断面積に比例するので、筋肉に強い負荷をかけると筋肉が太くなります。
筋トレによって「筋肉が損傷する」とよく言いますが、実際に筋肉の繊維がボロボロになるわけではなく、筋繊維の構造が少し乱れるくらいのものです。

そうやって筋繊維が乱れて炎症を起こすと、身体は筋肉を修復するために筋タンパク質を合成します。

また、近年の研究では筋トレで筋肉が刺激を受けると、筋肉の成長を抑制している「ミスタチオン」という物質が一時的に減り、筋細胞の増殖が促されるので筋肥大が起こることが明らかになっています。

参考:『筋肉の成長を邪魔する「ミスタチオン」とは?(46〜47ページ)』ー「石井直方の筋肉まるわかり大事典」(石井直方著)

筋肥大を起こすために最適な負荷は、最大筋力の80%で、回数(レップ数)は8〜12回

筋肥大を起こす負荷

前述したとおり、筋肥大を起こすためには筋肉が大きな力を発揮する必要があります。
筋トレをしているとよく「RM」という言葉を聞くことがありますが、これは「Repetition Maximum 読み:レペティション・マキシマム 意味:最大反復回数」のことです。
例えば、1RMとは1回しか上げることができない重さを表します。

筋肥大に最適な負荷は、およそ「80%1RM(1回しか上げられない重量の80%)」だと考えられています。
つまり、1RMが100kgの場合は、80kgのウエイトを使用するのが最適だということになります。

FSR(=Fractional Synthesis Rate)とは筋タンパク質の合成率を指します。60%〜90%1RMで高い合成率を示していることがわかります。

しかし、環境の都合上1RMの測定ができないこともあります。

そういった場合は、1セットで繰り返すことができるレップ数を参考にしましょう。
80%1RMのウエイトを使用したときのレップ数は、約8〜10回になります。
つまり、軽いウエイトから少しずつ上げていき、8回ぐらいが限界になる重量に達したら、それが現在使用すべきウエイトになります。

筋トレの負荷は強すぎると、筋肥大効果は下がってしまうので注意しよう

強すぎる負荷はNG

よく勘違いしてしまいやすいことなのですが、筋トレの負荷は強ければ強いほど良いというものではありません。

90%1RM(1〜3回程度しか挙げられない重さ)以上を使用する高強度のトレーニングになると、筋肥大は逆に起こりにくくなってしまいます。
この強度では、筋肥大ではなく最大筋力の向上が起こります。

こういった高強度の運動は、パワーリフティングの選手が使用することが多いですが、筋肥大を目的としている人が行うべきではありません。
また、無理に高強度の運動を行うと、筋肉や関節を痛めてしまうことがあります。
安全な筋トレを行うためにも、適切な重量設定を心掛けるようにしましょう。

負荷が強すぎると筋肥大が起こりにくくなるのは、高強度のトレーニングではレップ数や時間が短くなってしまうからです。
実は、筋肥大はトータルの負荷が重要だということが、最近の研究によって明らかになっています。

例えば、100kgを3回挙げるとトータルでは300kgの負荷ですが、80kgを8回挙げると640kgとなり、80kgのウエイト設定の方が筋肉に与えられる刺激が倍以上になります。
したがって、80%1RMくらいの負荷に設定すると、筋肥大に必要な刺激を最も効果的に与えられるのです。

自分に最適なウエイトを探そう、70%1RMが最低ライン

筋肥大に最適な負荷は、1セットのレップ数が8〜10回になる80%1RMですが、個人差があるので自分に最適な負荷を探す必要があります。
そのウエイトで重すぎれば軽くして、物足りなければ少しだけ重くするようにしましょう。

したがって、筋肥大に最適な負荷は最大負荷の「70%(15レップ)〜85%(6レップ)」の範囲で考えておくと良いでしょう。
ただし、60%(20レップ)の負荷よりも軽くなると、通常のトレーニングでは筋肥大がほとんど起きなくなってしまうので、70%1RMが最低ラインになります。

残念ながら、腕立て伏せやスクワットのような自重トレーニングでは、筋肥大はほとんど起こりません。

筋骨隆々のマッチョ体型を目指すなら、どうしてもダンベルやバーベルなどのフリーウエイトを使用する必要があります。

参考:『筋肥大に最も適した負荷は?(92〜93ページ)』ー「石井直方の筋肉まるわかり大事典」(石井直方著)

トレーニングの種目によっても最適な負荷は変わるので、適切なウエイトを使い分ける

コンパウンドをアイソレーションの負荷の設定

筋肥大に最適なトレーニングの負荷が分かったところで、実践的な負荷の設定方法について見ていきましょう。

実は、最適な負荷はトレーニングの種目によっても変わるので、種目に応じて適切なウエイトを使用する必要があります。
とはいえ、大きく2種類に分けるだけで良いので決して難しくありません。

コンパウンド種目は高負荷で行い、アイソレーション種目は低負荷で行おう

トレーニングの種目には大きく分けて、

  • コンパウンド種目
  • アイソレーション種目

の2種類があります。

コンパウンド(多関節)種目は、ベンチプレスやデッドリフトのような、複数の筋肉を同時に鍛えられる種目です。
アイソレーション(単関節)種目は、ダンベルフライやサイドレイズのような、ひとつの筋肉をピンポイントに鍛える種目です。

ここで重要なポイントは、コンパウンド種目は重いウエイトを扱えますが、アイソレーション種目ではそれほど負荷はかけられないということです。
したがって、1セットのレップ数が8〜10回になる80%1RMという指標は、主にコンパウンド種目が対象だと考えておくようにしましょう。

例えば、ダンベルベンチプレスで片手30kgを挙げることができても、ダンベルフライでは15kg程度しか扱えないことがほとんどです。
さらに、こういったアイソレーション種目では、1セットのレップ数が8〜10回になる80%1RMでは重すぎる場合があります。
サイドレイズなどの種目を高い負荷で行うのは良くありません。

アイソレーション種目の効果を高めるためには、レップ数が10〜12回になる負荷を設定しよう

アイソレーション種目を高い負荷で行っても、人によっては問題なくトレーニングを行えます。
しかし、ターゲットの筋肉に効いている感じがしなかったり、他の部分が筋肉痛になってしまう場合は、ウエイトが重すぎる可能性があるので調整する必要があります。

筋肉は効率的に動こうとするので、ひとつの筋肉で挙げられない場合は、他の筋肉を動員することで対応します。
例えば、サイドレイズは三角筋の中央部を鍛えるためのものですが、負荷が強すぎる場合は僧帽筋も鍛えられてしまいます。
同時に2つの筋肉が鍛えられるなら、負荷を強めた方が良いように感じるかもしれませんが、実は三角筋への負荷が他へ逃げてしまっているのです。

アイソレーション種目では、可能な限りターゲットの筋肉へ負荷を集中させることが重要です。したがって、1セットのレップ数が10〜12回になる、70〜75%1RMを目標に負荷を設定すると良いでしょう。
アイソレーション種目の負荷の設定は難しいので、自分に合う重量を見つけましょう。

自重トレーニングは筋トレの基本だが、十分な回数ができるようになったらダンベルを使おう

腕立て伏せや腹筋運動、懸垂のような自重トレーニングだけでも、正しいフォームで行えば細マッチョ体型には十分なれます。
しかし、筋肉ムキムキの体型やボディビルダーのような研ぎ澄まされた肉体には、残念ながらどれだけ自重トレーニングを続けてもなれません。
それは、筋肉への負荷が決定的に不足しているからです。

例えば、腕立て伏せ(プッシュアップ)で大胸筋を大きくしようとすると、通常は正しいフォームで行っても30回以上できるレベルに到達すると、それ以上の筋肥大は望めなくなります。
それ以上自重トレーニングを繰り返すと、筋持久力は伸びますが筋肉のサイズは大きくならないのです。

したがって、自重トレーニングで細マッチョ体型など、ある程度の体型に到達したら、それ以降はダンベルやバーベルなどのフリーウエイトを使用する必要があります。
自宅でトレーニングをする場合は、場所を取らないダンベルを使うのがオススメです。

参考:『自重トレだけでビルダーのような体になれる?(112〜113ページ)』ー「石井直方の筋肉まるわかり大事典」(石井直方著)

スロートレーニングを活用すれば、自重トレーニングでも負荷を強められる

何らかの理由でフリーウエイトを使用する環境を整えられなかったり、疾病等の理由で身体に強い負荷をかけられない場合は、「スロートレーニング」を活用してみましょう。

スロートレーニングとは、その名のとおり「ゆっくり行うトレーニング」のことで、基本的には、「3〜4秒かけて上げ、3〜4秒かけて下ろす」トレーニングを行います。

こういったスロートレーニングは、筋肉が力を発揮し続けることで筋肉の内圧が高まり、筋肉内での物質の循環を抑えるのが目的です。
そうすると、乳酸や水素イオンなどの代謝物が筋肉中に溜まり、ハードなトレーニングと同じような刺激を筋肉に与えられるのです。

自重トレーニングのような軽い負荷でも筋肥大効果を高められるので、傷害や疾病等で身体に強い負荷を与えられない場合でも、より安全にトレーニングを行いやすい方法です。
とはいえ、やはり自重トレーニングには限界があるので、ある程度のレベルに達したら、可能な限りフリーウエイトへ移行するようにしましょう。

参考:『スロートレーニングとは?(182〜183ページ)』ー「石井直方の筋肉まるわかり大事典」(石井直方著)

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筋トレは総負荷量が大切なので、セット数は3〜4回を目安にしよう

筋肥大を効果的に行うためには、コンパウンド種目では8〜10レップで限界を迎える重量、アイソレーション種目では10〜12レップの重量が最適だということが分かりました。
それでは、トレーニングのセット数はどのようにすれば良いのでしょうか?

1つの種目を3セット以上繰り返す方が、筋肥大の効果は高くなる

先ほども少し触れたように、筋肥大には単に1セットの負荷ではなく、トータルでの負荷が重要です。
1つの種目を1セットだけ行うよりも、複数回繰り返す方が筋肉への負荷が強くなるので、筋肥大の効果も高まります。

ノッティンガム大学のKumar氏らが2012年に発表した論文では、筋タンパク質の合成作用の観点から、トレーニングの最適なセット数を考察しました。
その結果、1〜3セットまでは筋肥大効果が順調に高まりましたが、4セット以上になると有意な差が認められませんでした。

したがって、筋トレのセット数は3セット程度が適切だと考えられます。
筋トレのメニューには様々な種目を取り込むため、1つあたりのセット数をあまり増やしすぎると、時間が掛かりすぎてしまいます。
筋トレの効果を高めるためには種目数も大切になるので、3セット程度でメニューを組むとバランスが良くなります。

参考:Kumar V, et al. Age-related differences in the dose-response relationship of muscle protein synthesis to resistance exercise in young and old men. J Physiol. 2009 Jan 15;587(1):211-7.

筋トレの経験が長い上級者の場合は、セット数を4〜5回に増やすと筋肥大効果が高まる

筋トレは3セットが基本

前述した研究結果には、被験者のトレーニング経験値が曖昧だったという問題点がありました。
筋トレの経験が長くなって筋肉量が増えてくると、トレーニングに対する身体の反応も変わってきます。
そのため、筋トレ経験者への適切なセット数は、初心者とは違ったものになると考えられます。

USWのRalston氏らが2017年に発表した論文では、トレーニングの経験レベルによる最適なセット数が明らかになりました。
その結果、筋トレの初心者では3〜4セットが、上級者では4〜5セットを行うと筋肥大に効果的だということが示唆されました。

したがって、筋トレのセット数はトレーニングの経験値によって、効果的な回数が異なるということを留意しておく必要があります。
とはいえ、基本的にはやはり「3セット」を目安にするようにして、コンパウンド種目のような複数の筋肉を鍛えられるものはセット数を増やすなど、種目やスケジュールに応じた柔軟な設定がオススメです。

参考:Ralston GW, et al. The Effect of Weekly Set Volume on Strength Gain: A Meta-Analysis. Sports Med. 2017 Jul 28.

30%1RM程度のごく軽い負荷でも、高回数で限界まで追い込めば筋肥大効果が高まる

近年では、新たなトレーニング方法が示唆される研究結果が発表されています。
それは、30%1RM程度のごく軽い負荷でも、高回数で限界まで追い込むトレーニングを行うと、高負荷で低回数のトレーニングと同じような筋肥大効果を得られるというものです。

Burd氏らが2010年に行った研究では、脚の筋肉を鍛えるレッグエクステンションを最大筋力の90%で行うグループと、わずか30%の低強度で行うグループに分類して、筋肥大強化の違いを検証しました。
両者のトレーニング強度は全く違いますが、必ず「疲労困憊」まで行うという点では同じです。

その結果、なんと30%1RMの低強度のグループでも90%1RMの高強度を同じくらいの筋肥大効果を得られたのです。

しかしながら、低強度のトレーニングを疲労困憊まで行うと、30レップ以上は繰り返す必要があるのでトレーニング時間が非常に長くなり、現実的ではありません。

ただ、低強度のトレーニングでも十分な筋肥大効果が得られると判明したことは、新たなトレーニング方法の可能性も示唆されるため大きな意味があります。

疾病等の影響で高負荷のトレーニングを行えない人でも、トレーニング方法によっては筋肉を大きくできるのです。

参考:Burd NA, et al. Low-load high volume resistance exercise stimulates muscle protein synthesis more than high-load low volume resistance exercise in young men. PLoS One. 2010b Aug 9;5(8):e12033.

筋トレに最適な負荷と回数を設定して、筋肥大の効果を最大限に高めよう

最適な負荷で筋トレの効果を上げよう
今回は、筋肥大に最も適した負荷について詳しく解説してきました。

筋トレはまず自重トレーニングから始めるという人も多いですが、残念ながら高い負荷をかけられないので筋肥大のレベルには限界があります。

そのため、ある程度の身体になった後は、ダンベルやバーベルなどのフリーウエイトへ移行しましょう。
こういったフリーウエイトでは、負荷の設定が非常に大切になります。

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複数の筋肉を同時に鍛えられるコンパウンド種目では、最大強度の80%程度、8〜10レップで筋肉が限界を迎える重量に設定しましょう。
1つの筋肉をピンポイントで鍛えるアイソレーション種目では、10〜12レップ行えるウエイトを使用すると効果的です。

適切な負荷を設定して筋肥大効果を高め、理想の肉体を手に入れましょう!

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