コンセントリック収縮による筋トレの効果は筋肉の回復を最大化できること

筋トレの動作はどのように行っているでしょうか?
よくある筋トレ講座等では、筋トレの動作は力を発揮するときに素早く行い、元に戻すときはゆっくり行うべきとされています。
確かに、それが筋トレのセオリーなのですが、状況によっては動作速度にバリエーションを持たせる方が良いこともあります。

例えば、筋肉の回復をできるだけ早めたい場合、筋肉が収縮するときの「コンセントリック」をメインにして、弛緩する「エキセントリック」は素早く行うのがポイントになります。
そこで今回は、コンセントリック収縮の効果や活用の仕方について、次のポイントを詳しく解説していきます。

この記事でわかること

  1. コンセントリック収縮は筋トレの最も基本的な動作で、筋肉が力を発揮しながら短くなること
  2. 筋肉が伸びながら力を発揮するエキセントリック収縮では、筋肉に強い負荷が掛かるため回復に時間が掛かる
  3. 疲労が蓄積しやすいエキセントリック収縮を制限すると、筋肉の回復を早めることができる
  4. 一度に筋肉を追い込みすぎるよりも、トレーニングの頻度を高める方が筋肥大効果が高まる
  5. 週に複数回鍛える部位など筋肉の回復を早めたいときに、コンセントリックトレーニングが威力を発揮する
  6. コンセントリックトレーニングでは、重力に逆らわずにバーベルを下ろすことで、エキセントリック動作を制限できる
  7. デッドリフトなど種目によっては、バーベルを落とすとエキセントリック動作を排除できる

コンセントリック収縮とは

コンセントリック収縮とは、筋肉が力を発揮しながら収縮する動作のことで、例えばダンベルカールで腕を曲げるときに起こります。
筋肉が力を発揮する最も基本的な動作なので、筋トレではコンセントリック収縮を意識することが大切です。

コンセントリック収縮とは、筋肉が力を発揮しながら短くなる動作のこと

筋トレの知識が身についてきた方は、「コンセントリック」や「エキセントリック」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
コンセントリック収縮は「短縮性収縮」を意味し、筋肉が力を発揮しながら短くなる動作のことです。

コンセントリック収縮を意識すると、筋肉の収縮を意識しやすくなる

近年では、筋肉に大きな負荷が加わるエキセントリックが注目されていますが、筋トレの基本はコンセントリックにあります。
なぜなら、筋トレのメイン動作である「力を最大限に発揮してウエイトを上げる」ときに、コンセントリック収縮が起きるからです。

例えば、ベンチプレスを行うときにバーベルを押し上げると、大胸筋の筋繊維を収縮させてパワーを発揮します。
これがコンセントリック収縮で、筋肉が動くときの基本動作となります。
したがって、コンセントリックを意識すると、筋肉の収縮を意識して負荷をしっかり加えることができるのです。

筋トレではこういったコンセントリックよりも、筋肉に強い負荷をかけられるエキセントリックの方が注目されています。
エキセントリックは「伸張性収縮」と呼ばれ、筋肉が力を出しながら引き延ばされる動作のことで、速筋繊維が優先的に動員されるので筋肉に強い負荷が掛かります。

参考:「コンセントリック」「エキセントリック」とは?(98〜99ページ)』ー「石井直方の筋肉まるわかり大事典」(石井直方著)

エキセントリック収縮は筋肉への負荷が強くなるので、回復に時間が掛かりすぎることがある

エキセントリック収縮を重視して、筋肉に負荷を掛けながらゆっくり伸ばすトレーニングを、「エキセントリックトレーニング」と呼びます。
エキセントリックトレーニングは筋肉への負荷が強くなるので、意識して行うと筋肥大の効果をかなり高められます。

ところが、筋肉の損傷が大きくなるので疲労が蓄積しやすく、筋肉の回復に長い時間が掛かるという欠点があります。
つまり、大筋群やトレーニングの頻度が高い種目でエキセントリック収縮を重視しすぎると、簡単にオーバートレーニングに陥ってしまうのです。

オーバートレーニングに陥ると、筋肉のパフォーマンスが低下して、トレーニングの効果が得られなくなります。
近年の研究では、一度のトレーニングで筋肉に強い負荷をかけて追い込むよりも、負荷を制限してでもトレーニングの頻度を高める方が、総合的な筋肥大の効果が高いと明らかになっています。

一度で筋肉を追い込みすぎるよりも、頻度を高める方が筋肥大の効果が高い

これまでは、筋肉への負荷はできるだけ高い方が良いと考えられてきました。
しかし、近年ではその定説が覆されつつあり、むしろトレーニングの負荷が高すぎると効果が低下するのではないかと考えられています。

2016年にニューヨーク州立大学のSchoenfeld氏らが発表した研究によると、限界まで追い込むトレーニングを週1回行うよりも、負荷をやや低めに設定して週に複数回のトレーニングを行う方が、筋肥大の負荷が高いと明らかになりました。
それは、筋肥大の効果は総合的な負荷量によって決まるからです。

筋トレの頻度

下記URLより引用:筋トレの頻度を増やしたほうが筋肥大することがわかる

高負荷のトレーニングで筋肉を激しく追い込めば、確かにその日の負荷は高くなります。
その一方で、負荷をやや下げてトレーニングを行えば1日分の負荷は低くなりますが、そのトレーニングを週2回行えばトータルでの負荷は前者より増えます。

参考:”Schoenfeld BJ, et al. Effects of Resistance Training Frequency on Measures of Muscle Hypertrophy: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Med. 2016 Nov;46(11):1689-1697.”

エキセントリック収縮を制限すると、筋肉の回復を早めることができる

筋肥大に効果的だとされているエキセントリックトレーニングは、筋肉への負荷が強くなるので、筋肉の回復に時間が掛かります。
通常のトレーニング方法でも、ダンベルをゆっくり下ろすようにしていると、知らず知らずの間にエキセントリック収縮が強調されるので、筋肉のダメージが大きくなります。

エキセントリック収縮を制限するためには、ウエイトを下ろす動作を速めることが必要になります。
通常のトレーニング方法では、ウエイトを下ろすときは重力に従って加速度的に落下しないように、ブレーキをかけながらゆっくり下ろしていきます。

このとき、ブレーキをあまりかけないようにして、自由落下より少しだけ遅いくらいの速度でウエイトを下ろしていくと、エキセントリック収縮を制限することができます。
この方法は、筋トレの負荷を軽くする代わりに筋肉の回復を早め、トレーニングの頻度を高めることが狙いです。

コンセントリックトレーニングの効果は、科学的に証明されている

コンセントリックトレーニングの大きな特徴は、筋肉への負荷を抑えることができるため、筋肉の回復を早められることです。
こういった効果は、科学的な調査によっても証明されているので、実際のトレーニングに活かすと大きな効果を得られます。

2014年にWest氏らが行った研究では、被験者に最大重量の75%のウエイトを使用して、コンセントリックトレーニングを行うという実験を行いました。
テストステロンやコルチゾール、乳酸の数値を測定することで、筋肉への負荷を測定しました。

その結果、全ての数値で明らかな上昇を確認でき、さらに筋肉の損傷はごくわずかだということが判明しました。
つまり、コンセントリックトレーニングでは筋肉をしっかり刺激しながらも、筋肉のダメージを少なく抑えることができるのです。

参考:”West DJ, et al. The metabolic, hormonal, biochemical, and neuromuscular function responses to a backward sled drag training session. J Strength Cond Res. 2014 Jan;28(1):265-72.

コンセントリックトレーニングが威力を発揮するのは、筋肉の回復を早めたいとき

コンセントリックトレーニングには、筋肉へ十分な負荷を与えつつも、筋肉へのダメージを抑えることができるという素晴らしい効果があります。
こういった特徴が大きな威力を発揮するのは、やはり筋肉の回復速度を上げたい場合です。

週に複数回のトレーニングを行う部位では、コンセントリックトレーニングが効果的

コンセントリックトレーニングが大きな威力を発揮するのは、週に複数回のトレーニングを行う部位を鍛えるときです。
例えば、大胸筋は大きな筋肉であるため、種目数が少ないと全体を十分に鍛えることができません。

しかし、1日に多くの種目を詰め込むと、オーバートレーニングに陥ってしまいます。
週2日に分割したトレーニングを行う場合でも、負荷が強すぎると筋肉が十分に回復できないので、やはりオーバートレーニングの危険性があります。

ところが、負荷を抑えたいからといってウエイトを軽くすると、筋肉が十分に鍛えられなくなります。
そこで、コンセントリックトレーニングを活用すると、筋肉に十分な刺激を与えつつも回復を早めることができるのです。

コンセントリックトレーニングでは、通常の1.5〜2倍くらいの速度でネガティブ動作を行おう

コンセントリックトレーニングでは、ウエイトを上げる「ポジティブ」動作は通常と同じように、1秒くらいの時間で素早く行います。
重要なのはウエイトを下げる「ネガティブ」動作で、これを通常より速くすることが必要になります。

実は、トレーニング動作時のリズムは人によって違うため、具体的にどのくらいの速さでネガティブ動作を行うべきなのかを、一概に言うことはできません。
通常のトレーニング方法では、ポジティブ動作を約1秒で行い、ネガティブ動作には3秒ほどかけるのが適切だとされています。

コンセントリックトレーニングでは、できるだけネガティブ動作を制限します。
しかし、筋肉に全然ブレーキをかけず自由落下のような感じで下げてしまうと、筋肉への負荷が完全に抜けてしまいますし、関節に負担が掛かるので良くありません。

したがって、ネガティブ動作を概ね1.5〜2秒で行うと、筋肉に負荷をかけつつも疲労の蓄積を抑えられると考えられます。
ちなみに、エキセントリックトレーニングでは、7秒以上という非常に長い時間をかけて、じっくりウエイトを下ろして筋肉に負荷をかけていきます。

ベンチプレスでは、重力に逆らわずにバーベルを静かに下ろしていくと、大きな効果を得られる

大胸筋全体を鍛えるために分割トレーニングを行う場合、通常のトレーニング方法では筋肉痛がまだ回復していないのに、次のメニューを行わなければならないことがあります。
筋肉痛があるのに無理にトレーニングを行うと、オーバートレーニングに陥るので筋肉が成長しません。

大胸筋のトレーニングで最も強い負荷が掛かり、疲労が蓄積して筋肉痛が長引きやすいのは、フラットベンチで行うベンチプレスです。
さらに、ベンチプレスで大胸筋に最も強い負荷が掛かるのは、やはりバーベルやダンベルを下ろしていくエキセントリック動作時です。
そのため、バーベルベンチプレスで大胸筋断裂事故が最も発生しやすいのは、エキセントリック収縮終盤の段階なのです。

ベンチプレスで筋肉痛が長引くのを抑えたい場合は、バーベルを下ろすスピードを速めるようにしましょう。
とはいえ、バーベルを自由落下のようにいきなり落とすことはできないので、重力に逆らわない感じで静かに下ろしていきます。
こうすると、大胸筋の筋肉痛を最小限に抑え、次のメニューへ迅速に移行できるのです。

種目によっては、エキセントリック収縮をほぼ完全に排除することができる

先ほどは、コンセントリックトレーニングが威力を発揮するベンチプレスについて解説しましたが、ウエイトを身体の上で移動させるという構造上、エキセントリックを完全に排除することはできません。
しかし、種目によってはエキセントリック動作をほぼ完全に排除して、コンセントリック動作のみに切り替えることができます。

例えば、デッドリフトを行う場合、ウエイトを持ち上げるコンセントリック収縮が完了した後、ウエイトを下ろさずそのまま床に下ろすことで、エキセントリック収縮を行うことなくトレーニングを完了できます。
また、ダンベルカールのような比較的軽いウエイトを扱う種目では、ベンチプレスよりも素早く下ろすことで、エキセントリック収縮を抑えられます。

ただし、こういった動作を行う場合は、挙上したウエイトを素早く下ろしていく必要があるため、手を滑らせて身体の上にウエイトを落としてしまわないように注意が必要です。
また、ウエイトを下ろすときは大きな音がするため、環境によっては気をつける必要があります。

スポーツの試合日が近いときに、できるだけ筋肉痛にならずにトレーニングしたい場合にも有効

筋トレは、アスリートが筋力を向上させるためにも行いますが、実戦時に筋肉痛が残っているとパフォーマンスが低下してしまいます。
特に、大切な試合日には筋肉が最大限のパワーを発揮する必要があるため、筋肉痛を完全に回復させたいものですが、試合日が近い場合でもトレーニングを行いたい場合があります。

筋肉痛を抑えたいからといってウエイトを下げてしまうと、わざわざトレーニングをする意味がありません。
筋トレには筋肉のパフォーマンスを整える効果もあるので、通常と同じような負荷をかけることが望ましい場合が多いです。
そこで威力を発揮するのが、コンセントリックトレーニングなのです。

十分な重量を使用しつつも、エキセントリック収縮を制限することによって、筋肉への刺激の強さと回復の早さを両立させることができます。
このように、コンセントリックトレーニングは筋トレ愛好家のみならず、スポーツ選手が活用する場合も大きな効果があるのです。

コンセントリック収縮を活用して、筋肉の回復を早めて効率的なトレーニングを行おう

今回は、コンセントリックの意味や活用の仕方について、次のポイントを詳しく解説してきました。

今回のまとめ

  1. コンセントリック収縮は筋トレの最も基本的な動作で、筋肉が力を発揮しながら短くなること
  2. 筋肉が伸びながら力を発揮するエキセントリック収縮では、筋肉に強い負荷が掛かるため回復に時間が掛かる
  3. 疲労が蓄積しやすいエキセントリック収縮を制限すると、筋肉の回復を早めることができる
  4. 一度に筋肉を追い込みすぎるよりも、トレーニングの頻度を高める方が筋肥大効果が高まる
  5. 週に複数回鍛える部位など筋肉の回復を早めたいときに、コンセントリックトレーニングが威力を発揮する
  6. コンセントリックトレーニングでは、重力に逆らわずにバーベルを下ろすことで、エキセントリック動作を制限できる
  7. デッドリフトなど種目によっては、バーベルを落とすとエキセントリック動作を排除できる

コンセントリック収縮を強調したトレーニングを行うと、筋肉の回復を早めたり、オーバートレーニングを回避したりできます。
筋肉に最も強い負荷が掛かるエキセントリック収縮を制限すると、ウエイトの重量を減らすことなく筋肉への負荷を減らせます。
つまり、筋肉にしっかり負荷をかけながらも回復を早められるのです。

コンセントリックトレーニングを行う場合は、ウエイトを挙げて筋肉を収縮させるコンセントリック動作は通常どおり行い、ウエイトを降ろすエキセントリック動作はできるだけ速く行います。
どれだけエキセントリック動作を抑えられるかは、種目によって異なるので、実践する際は安全に行えるように確認しておきましょう。
コンセントリック収縮を活用して、筋肥大の効率を高めていきましょう。

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