加圧トレーニングの素晴らしい効果を徹底解説!激しい筋トレと同じ効果がある?

加圧トレーニングの効果

筋肉を大きく成長させるためには、筋肉に強い負荷を与えるウエイトトレーニングを続ける必要があります。

しかし、ウエイトトレーニングは身体に強い負担が掛かるため、年齢や健康状態によっては実施するのが難しいことがあります。
そこで近年注目を集めているのが、「加圧トレーニング」と呼ばれる新しいテクニックです。

加圧トレーニングは従来の筋トレとは全く異なり、ごく低めの負荷でも高強度のウエイトトレーニングと同じような、高い筋肥大効果を得られることが分かっています。このテクニックは一般の筋トレ愛好家が実践するのは難しいのですが、医療現場等ではリハビリに活用するための研究が進んでいます。

今回は、筋肥大やリハビリ等に素晴らしい効果を発揮する加圧トレーニングについて、次のポイントを詳しく解説していきます。

この記事でわかること

  1. 加圧トレーニングとは、専用のベルトで血流を制限してトレーニングを行うテクニック
  2. 加圧トレーニングは正座による足の痺れから、日本人のボディビルダーが考案した
  3. 加圧トレーニングは血流を制限することで、大量の乳酸が蓄積されて筋肥大効果が高まることが証明されている
  4. 加圧トレーニングでは大量の乳酸が蓄積するので、低強度でも速筋繊維を優先的に鍛えられる
  5. 加圧トレーニング行うと血管の機能性や柔軟性が高まり、血行や動脈硬化が改善される
  6. 比較的軽い負荷で効果を得られるので、正しく実践すれば安全性が高いトレーニング方法
  7. 加圧トレーニングは必ず専用の器具を使用して、有資格者による指導を受ける必要がある
  8. 加圧する圧力や時間を適切に設定する必要があるため、必ず指導者のもとで実施しよう
  9. パーキンソン病の患者に対するリハビリ効果も確認されており、様々な分野での応用が期待される

Contents

加圧トレーニングとは?

加圧トレーニングとは、専用のベルトで血流を制限してトレーニングを行うテクニックです。速筋繊維を優先的に鍛えられることや、疲労物質の蓄積によるアナボリックホルモンの分泌促進で、高い筋肥大効果を得ることができます。

参考:加圧トレーニングのオフィシャルサイト

加圧トレーニングは正座による足の痺れから考案された

近年大きな注目を集めている加圧トレーニングですが、実は日本のボディビルダーである佐藤義昭(さとうよしあき)氏が考案したものなのです。
佐藤氏は法事の席に参列したときに、正座による足の痺れと腫れを和らげるためにマッサージをしていたところ、筋肉の張り具合がウエイトトレーニングでオールアウトした(追い込んだ)時と似ていることに気付きました。

佐藤氏はトレーニング時と正座時の「血流が悪化している」という共通点を見出し、血行を悪化させることで「ハードなトレーニング時と同じ状況」を作り出せるのではないかと考えました。

実際に、高強度のウエイトトレーニングを行っているときは、疲労物質などの蓄積によって血流が悪化するので、正座をする時と状況が似ていると言えるでしょう。

それから佐藤氏は、どれくらいの圧力をかけてどのように血流を制限するのか、試行錯誤を重ねて一般に広く実施できる方法論を確立しようとしました。

それだけではなく、人為的に血流を制限してトレーニングを行うという性質上、確かな安全性を確保することも必要だったので、佐藤氏は研究開発に40年以上の歳月を費やしました。

血流の制限で大量の乳酸が蓄積され、身体のアナボリスムが高まる

加圧トレーニングは専用のベルトで上肢もしくは下肢を縛り、血流を制限して行うことで血液中に乳酸を蓄積させることを目的としています。
一般的には乳酸は疲労物質と考えられていますが、近年の研究によって単なる疲労物質などではないことが明らかになっています。

そもそも、乳酸とは筋肉に必要なエネルギーであるATP(アデノシン三リン酸)を生成するための、解糖系の代謝によってピルビン酸から作り出されるものです。

確かに、乳酸は代謝産物であるため余分な疲労物質という側面もありますが、脂質と酸素からATPを生成する有酸素系の代謝で必要なエネルギー源になるという働きもあります。

それだけではなく、乳酸が大量に分泌されることで脳下垂体(ホルモンを制御する内分泌器官)が刺激されて、成長ホルモンが促進されるという作用もあるのです。
成長ホルモンは筋タンパク質の合成を促す「アナボリックホルモン」の一種で、骨格や筋肉の成長を促進させる重要なホルモンです。

成長ホルモン自体が筋肥大の効果を爆発的に高めるわけではありませんが、成長ホルモンが分泌されることによって身体のアナボリズム(タンパク質合成作用)が高まり、筋肥大が促進されると考えられています。

トレーニング後にベルトを外すことで、こういった効果のある高濃度の乳酸が一気に流れていき、脳下垂体が刺激されて大量の成長ホルモンが分泌されるのです。

血流を制限するという特性上、加圧トレーニングは手軽に行えない

前述したように、加圧トレーニングは専用のベルトを腕や足に巻き、血流を制限することで筋肉への刺激を高めます。よって加圧トレーニングは血管を圧迫するという特殊な条件下で行うものなので、誰でも手軽に行えるものではありません。

特に、タオルや包帯のようなもので代用して勝手に加圧トレーニングを行うのは、極めて危険なので絶対に行ってはいけません。

加圧トレーニングで非常に重要なことは、正しい場所に正しい圧力でベルトを巻くことです。
この調整ができない道具で無理に加圧トレーニングを行うと、血管に障害や血栓が生じて恐ろしい健康被害の原因になってしまう可能性があります。

そのため、加圧トレーニングは一般人がなかなか手軽に行うことはできないので、専用の器具もしくは専門のトレーナーの指導のもとで行うことが必要です。

加圧トレーニングを行うときは、必ず日本の「KAATSU JAPAN 株式会社」が公式に認定している専用の器具を使用する必要があります。

さらに、安全上の観点から加圧トレーニングの方法などを他人に勝手に教えることは禁止されており、指導するためには前述した「KAATSU JAPAN 株式会社」が独自に発行している民間資格を取得する必要があります。

ただし、資格がない一般人でも自ら加圧トレーニングができる器具に関しては、正しく使用する場合においては個人で自由に使用でき、他人に指導することも認められています。

加圧トレーニングには、筋肥大以外にも様々な効果がある

加圧トレーニングは専用のベルトで腕や足を圧迫して、血流を制限した状態で行うという特殊なトレーニング方法です。加圧トレーニングは低強度のトレーニングでも、高強度のウエイトトレーニングと同じような筋肥大効果を得られることで有名です。

実は、加圧トレーニングは筋肥大効果以外にも、次のような素晴らしいメリットがあります。

加圧トレーニングのメリット
  • 加圧トレーニングは低強度でも速筋繊維を優先的に鍛えられる
  • 血流制限による乳酸濃度の高まりで、成長ホルモンが大量に分泌される
  • 血管の拡張および収縮機能が高まり、血行が改善される
  • 血管の細胞が柔らなくなって弾力性が戻り、動脈硬化が改善される
  • 比較的軽い負荷で効果を得られるので、正しく実践すれば安全性が高い

加圧トレーニングは低強度でも速筋繊維を優先的に鍛えられる

筋肉は筋繊維と呼ばれる組織が束になって構成されており、筋繊維は速筋(そっきん)と遅筋(ちきん)の2種類に大別されます。
速筋は瞬発量を発揮するときに活用され、遅筋は持久力を発揮するという特徴があります。
速筋は大きな力を発揮するときに活躍するのでサイズが大きいため、筋肉量を増やすためには速筋のトレーニングが欠かせません。

しかし、筋肉には「サイズの原理」というものがあり、サイズの小さな筋肉から順番に運動へ動員されます。
速筋繊維は運動の強度が高くなってからようやく動員され始めるので、速筋を鍛えるためには高強度のウエイトトレーニングを行う必要があるのです。
つまり、何らかの原因で強度の高いトレーニングを実施できない場合は、筋肉量を増やすのはなかなか難しいということなのです。

ところが、加圧トレーニングでは血流の制限によって血液量が不足するため、サイズの原理で始めに動員された遅筋繊維が酸欠状態になります。
これは、ちょうど高強度のウエイトトレーニングを行っているときと同じ状況なので、脳は速筋繊維のパワーが必要な強い負荷を受けていると勘違いして、速筋繊維を動員させるようになります。

したがって、加圧トレーニングでは高強度の筋トレと同じような負荷を筋肉に与え、強い筋肥大効果を得ることができるのです。

血流制限による乳酸濃度の高まりで、成長ホルモンが大量に分泌される

前述したように、筋肉が運動するために必要なATP合成の一環として、糖質が分解されることで乳酸が生成されます。
大量の乳酸が分泌されると、脳下垂体が刺激されて成長ホルモンやテストステロンなどのアナボリックホルモンと、神経を興奮させるアドレナリンの分泌が促進されます。

通常は乳酸が生成されても、ある程度は血流に乗って排出されるのですが、加圧トレーニングでは血流を制限するため、乳酸がどんどん蓄積されていきます。
この急激な乳酸濃度の高まりによって、筋肉中のレセプター(受容体)が強く刺激されるため、成長ホルモンを分泌させる脳下垂体の反応も強まります。

成長ホルモンは筋肥大効果を高めると言われていますが、実際のところは直接的に筋肥大を促進させる効果は低いことが分かっています。
成長ホルモンの重要なポイントは、身体のアナボリズム(筋タンパク質の合成作用)を高めることや、アンチエイジングの効果が非常に高いというところにあります。

実際に、成長ホルモンは若返りホルモンとも呼ばれていて、研究によって老化防止や肥満改善の効果があることが確認されています。

被験者に成長ホルモンを投与することで、肌のシワや白髪が減るといった若返りの効果が証明されたという研究結果も報告されています。
加圧トレーニングをすると、平常時の290倍もの成長ホルモンが分泌されることが分かっているので、それだけアンチエイジングの効果も高いということなのです。

参考:『筋トレは美容に効果的?(406〜407ページ)』ー「石井直方の筋肉まるわかり大事典」(石井直方著)

血管の拡張および収縮機能が高まり、血行が改善される

私たちの身体を循環している血液は、心臓から動脈を伝わって全身へ送り出され、身体の各器官に行き渡った後は静脈を伝わって心臓へ戻っていきます。
加圧トレーニングでは、動脈と静脈の通り道である腕や足の付け根部分を圧迫するので、身体の一部分の血流が一時的に減少します。
そうなると、脳は血行を改善するために血流量を増やすので、血管が拡張して身体の隅々まで血液が行き渡るようになります。

加齢や運動不足などで血行が悪化すると、身体が疲れやすくなったり凝りや痛みなどのつらい症状が出たりします。
その他にも、血行不良は身体の末端の体温低下を招くので、冷え性の原因ともなります。

加圧トレーニングではこういった加圧と除圧を繰り返すため、毛細血管などの血行が改善されて、肩凝りや冷え性などのつらい症状の改善に繋がると考えられます。
ちなみに、毛細血管は動脈から静脈へ血液が伝わる部分の血管で、非常に細くて数が多いことが特徴です。

毛細血管には動脈から伝わった酸素や栄養素など、生命の維持に必要不可欠な物質を各組織に送り届け、その一方で代謝物や老廃物などの不要な物質を受け取って静脈へ伝えるという極めて重要な役割があります。

毛細血管が発達して血流が改善すると、これらの機能も向上するため健康状態が改善されます。

血管の細胞が柔らなくなって弾力性が戻り、動脈硬化が改善される

通常は血管の壁は柔らかく弾力性があり、血液をスムーズに送り届けられるようになっています。

しかし、血管は生活習慣や加齢などによって硬くなって弾力性を失い、血液を送る力は次第に弱くなっていきます。動脈が硬くなってしまうことを「動脈硬化」と呼びますが、これは心臓や脳などの重要な器官の疾患に繋がります。

動脈硬化が発生すると血流が悪化するため、血栓(プラーク)が発生しやすくなります。大きくなった血栓が他の部分に流されて他の血管に引っかかると、血流が止まってその先の器官に血液を送り届けられなくなります。

例えば、血栓が心臓の冠動脈で詰まると心筋梗塞が発生して、命に関わる恐ろしいことになってしまいます。

血管の健康状態に大きな影響を与えると考えられているのは、血管の最内層にある血管内皮細胞と呼ばれる部分です。血管内皮細胞は一酸化窒素(NO)を生成して、血管の収縮や弛緩などに関わる柔らかさや炎症細胞などを調整しています。

加圧トレーニングを継続的に実施すると、一酸化窒素の分泌が促進されて血管内皮細胞が若返り、血管の弾力性が蘇るという効果が確認されています。

このように、加圧トレーニングを活用すると血管が健全になるので、循環器の疾患も改善することができると考えられています。

ちなみに、一酸化窒素とは体内で合成される窒素化合物の一種で、血管を拡張させる効果のある物質です。アルギニンやシトルリンに血行や性機能を改善する効果があるのは、こういった働きがある一酸化窒素の合成を促進させる効果があるからです。

比較的軽い負荷で効果を得られるので、正しく実践すれば安全性が高い

筋肉を大きく成長させるためには、通常は高強度のウエイトトレーニングを続ける必要があります。健康状態の良い人や若い人の場合は、問題なく筋トレを行って筋肉を大きくすることができます。

しかし、健康に問題を抱えている人や高齢者は身体に強い負荷をかけることができないため、ウエイトトレーニングを続けるのは難しいことがあります。

そこで大きな効果を発揮するのが、比較的軽い負荷でも筋肥大効果を得られる加圧トレーニングです。
加圧トレーニングは血管を圧迫するという特性から、自宅で手軽に行えるものではないため、一般の筋トレ愛好家には向いていないトレーニング方法です。

しかし、その一方で医療機関が患者の健康状態の改善やリハビリのために、加圧トレーニングを取り入れるのは極めて有効です。実際に、近年では様々な器官によって加圧トレーニングの応用法が研究されており、特に医療機関では大きな注目を集めています。

例えば、動脈硬化や心疾患を抱えた患者に加圧トレーニングを実施して血管の状態を改善したり、何らかの疾患で筋力が大幅に衰えてしまっている患者のリハビリとして応用したりなど、様々な分野での応用が期待されているのです。

参考:『加圧トレーニングって何?(188〜189ページ)』ー「石井直方の筋肉まるわかり大事典」(石井直方著)

正しい加圧トレーニングを行うためのポイントを確認しておこう

加圧トレーニングは腕や足を専用のベルトで圧迫することで血流を制限して、低負荷のトレーニングでも高い筋肥大効果を得られるテクニックです。
単に筋肥大の効果が高いだけではなく、健康増進に関する様々なメリットがあることも大きな特徴です。
しかし、加圧トレーニングは血管を圧迫するという特性上、次のようなポイントを意識して実践する必要があります。

必ず専用の器具を使用して、有資格者による指導を受ける必要がある

前述したように、加圧トレーニングは必ず日本の「KAATSU JAPAN 株式会社」が公式に認定した、専用の器具を使用して実践するようにしましょう。
ズボンのベルトやタオルのような日用品で代用しようとすると、完全に血行が止まったり血管にダメージが及んだりして、深刻な健康被害が生じることがあるので極めて危険です。

また、インターネット上では類似した製品が安価で販売されていることがありますが、正規品でないものが多いので注意が必要です。

さらに、加圧トレーニングの指導には専用の資格が必要になっているので、有資格者以外が他人に加圧トレーニングについて指導することはできません。
これは、知識が不足している人が安易に他人に加圧トレーニングを行わせて、深刻な事故が発生するのを防ぐためです。
加圧トレーニングの有資格者は、資格認定書や顔写真が記載されたIDカードを保有しているので、必ず有資格者であることを確認してから指導を受けるようにしましょう。

また、加圧トレーニングは単に適当に血管を圧迫して行うものではなく、個人の体力や目的に合わせて適切な圧力を加えなければならず、トレーニング中の反応などにも個人差があります。
したがって、トレーニング終了まで有資格者とのマンツーマンの指導を受ける必要があり、グループレッスンのような複数の対象者に指導する形式は禁止されているので、必ず正しい指導を受けるようにしましょう。

加圧する圧力や時間には細心の注意を払い、安全性を心掛けること

先ほども触れたように、加圧トレーニングは適切な圧力を血管にかけることが大切なので、自分で判断して適当に行うと効果が出ないばかりか、予期せぬ怪我に繋がってしまうので非常に危険です。
トレーニングに適切な加圧量には個人差があるうえに、血圧同様にその日の体調によって常に変動するため、トレーニングを行うときは常に適切な圧力を設定することが大切です。

安全な加圧トレーニングを続けるためには、加圧時間を腕の場合は10分以内、足の場合は15分以内に抑える必要があります。
加圧トレーニングをそれ以上続けたい場合は、この時間が経過したら一度除圧して、少し休憩を挟んでから再び加圧を再開するようにしましょう。
特に、運動経験があまりない人やトレーニング初心者、および高齢者は決して無理せずに、慣れるまでは5分以内で一度除圧するようにしましょう。

また、加圧できる部分は必ず腕か足のどちらか一方だけで、決して腕と足の両方を同時に加圧してはいけません。
これは、腕と足の血流悪化によって血液が極端に停滞して、非常に負荷が強くなるので吐き気やめまいなどの症状が出たり、深刻な怪我に繋がってしまったりするからです。
腕と足の両方を鍛えたい場合は、必ずひとつずつ順番に行うようにすることで、安全かつ効率的なトレーニングが行えます。

ちなみに、加圧トレーニングでは腕から行う方が心臓への負荷が軽減されるので、まずは腕を鍛えてから足に移行する方が効果的だと考えられています。
加圧トレーニングを行うときは腕や足の皮膚が圧迫されるので、専用のベルトを肌に直接巻くと皮膚を痛めてしまうことがあります。
袖のあるシャツやズボンを着用することで、皮膚にも優しい加圧トレーニングを行えます。

体調が悪いときに加圧トレーニングを行ってはいけない

どんなトレーニングや運動でも同じことなのですが、体調が悪いときに無理にトレーニングを行ってはいけません。
加圧トレーニングは筋肉への負荷自体は軽いのですが、血管を圧迫して大量の乳酸を蓄積させるという特性上、身体には強い負担が掛かります。
そのため、無理をして鍛えすぎると身体に疲労が蓄積して、オーバートレーニングなどの深刻な体調不良を招きかねません。

特に、体調の悪い日はトレーニングを行わないようにして、たとえ体調が良くてもトレーニング中に気分が悪くなったときは、トレーニングを中止するようにしましょう。無理なトレーニングは効果を低下させるだけでなく、思わぬ怪我に繋がることがあるので注意が必要です。

その他にも、次のような疾患や症状がある場合は、加圧トレーニングは行ってはいけません。

  • 骨折や脱臼、筋断裂や肉離れなどの負傷を負っている
  • 化膿性疾患もしくは痛みやむくみがある
  • 高血圧や心臓の疾患を抱えている
  • 妊娠中および生理中である
  • 発熱や皮膚の疾患がある
  • ガンや腫瘍がある

加圧シャツには効果がない

近年ではフィットネスに対する注目が高まっていますが、その中でも低負荷で高い筋肥大効果を得られる加圧トレーニングは、特に注目を集めています。
こういった消費者の心理を逆手に取って、全く効果のない商品を高額で売りつけようとする悪質商法が横行しているので、騙されないように注意が必要です。
そのひとつがテレビやインターネット上などで紹介されている、「加圧シャツ」と呼ばれるものです。

加圧シャツを販売している各種メーカーは、それを着るとあたかも筋肉量が増えたり体脂肪が減ったりするかのように宣伝していますが、加圧シャツを着用してもそのような効果は絶対に得られません。

加圧シャツは本物の加圧トレーニングとは何の関係もなく、こういった効果は何の科学的根拠もない虚構です。

誤った情報に騙されないようにするために、正しい知識を身につけることが大切です。

加圧トレーニングの科学的な根拠を確認しておこう

加圧トレーニングは、血管を圧迫して筋肉に特殊な刺激を与えることによって、比較的低強度のトレーニングでも高い筋肥大効果を得られるテクニックです。
さらに、筋肥大効果だけではなく健康状態の改善やアンチエイジングの効果もありますが、専用の器具を使用して正しい指導を受ける必要があります。

それでは、加圧トレーニングによって安全に筋肉を大きくできるという、科学的な根拠について確認していきましょう。

加圧トレーニングの安全性は極めて高いことが保証されている

2006年にNakajima氏らは日本における加圧トレーニング(KAATSU)の現状に関して、どのような人々がどんな目的で加圧トレーニングを活用しているのか、また満足度や副作用などについて詳しい調査を行いました。
当時の日本国内には加圧トレーニングを受けられる施設が195あり、そのうちの105施設で指導者や講師からの回答を得ることができました。

その結果、実に12,642人が加圧トレーニングを受けていることが明らかになり、男性が45.4%で女性は54.6%、10代の若い世代から80歳以上の高齢者までという、極めて幅広い層に親しまれていることが分かりました。
最も一般的な目的は、アスリートの筋肉を強化することや、高齢者を含む被験者の健康増進にありました。

健康状態の改善に関しては、脳血管疾患や心臓疾患、神経筋疾患や整形外科疾患、さらに高血圧や糖尿病の改善のために行われていました。
加圧トレーニングはウエイトトレーニング以外にも、サイクリングやウォーキングに対しても適用されています。
ほとんどの施設では毎回5〜30分の加圧トレーニングが実施されており、頻度は週に1〜3回が最も多いことが分かりました。

施設の約80%が加圧トレーニングの結果に満足していましたが、静脈血栓(0.055%)や肺塞栓症(0.008%)、横紋筋融解症(0.008%)などの深刻な副作用が発生していることも分かりました。
とはいえ、この数値は極めて低いものであるため、加圧トレーニングはアスリートや一般人が身体を鍛えられる、安全かつ効果的な方法であることが証明されています。

加圧トレーニングの安全性について

下記URLより引用

参考:”T. Nakajima, et al. Use and safety of KAATSU training:Results of a national survey. Int J. KAATSU Training Res. 2006; 2: 5-13.”

加圧トレーニングの安全性は確実に向上し続けている

加圧トレーニングの人気は年々高まっているため、様々な状況が変化していると考えられます。
前述したNakajima氏らの報告から10年後の2016年に、Yasuda氏らは加圧トレーニングの利用状況や安全性を再調査しました。

今回は、前回よりもさらに多い232施設の指導者や講師からの回答があったため、より広範囲で信頼性の高い結果を得られることができました。
その結果、加圧トレーニングは前回同様に様々な目的で活用されており、内訳は次のようになっていることが分かりました。

  • 健康増進(87%)
  • 食事療法(85%)
  • 美容とアンチエイジング(70%)
  • 筋力の増加(71%)
  • 筋肥大(72%)
  • スポーツパフォーマンスの向上(53%)

その他にも、次のような疾患のリハビリにも活用されていることが分かり、それらに改善傾向が見られた割合は全体の約92%を占めました。
しかし、めまい・皮下出血・眠気・しびれ・吐き気・かゆみなどの副作用が発生したことも確認されました。

  • 整形外科疾患(38%)
  • 肥満(17%)
  • 糖尿病(12%)
  • 脳血管疾患(11%)
  • 心血管疾患(8%)
  • 鬱病(7%)
  • 不妊症(6%)
  • 神経筋疾患(5%)
  • 免疫疾患(3%)

しかし、前回の調査で見られたような血栓症や横紋筋融解症の発生例はなく、さらに脳出血や脳梗塞といった致命的な副作用も確認されませんでした。
これらのことから、適切な加圧トレーニングの施設で指導者のもとで実施すれば、被験者の年齢や性別に関係なく安全かつ効果的なトレーニングを行えることが分かりました。

加圧トレーニングの安全性について

下記URLより引用

“Tomohiro Yasuda, et al. Use and safety of KAATSU training: Results of a national survey in 2016. Int J. KAATSU Training Res. 2017; 13: 1-9.”

加圧トレーニングで筋肥大効果が得られることも証明されている

Yasuda氏らが2014年に実施した研究では、加圧トレーニングで本当に筋肥大効果を得られるのか調査しました。
9人の男性を通常のトレーニングもしくは加圧トレーニングを同じ負荷で行うグループに分類して、上腕三頭筋および上腕二頭筋を鍛える種目を4セット行い、トレーニング前後の身体の変化を調査しました。

その結果、加圧トレーニングを行ったグループでは、加圧によって筋肉活性が次第に増加するのに対し、通常のトレーニングを行ったグループでは増加しませんでした。
また、トレーニング後の血中乳酸濃度は加圧トレーニングを行った方が、2倍近くも高くなることが分かりました。

この実験は筋肥大の効果を直接的に計測したものではありませんが、加圧トレーニングによる筋肉活性の強化によって、通常のトレーニングよりも筋肥大効果が高まることが示唆されました。
特に、高齢者や身体の活動度が低い患者に加圧トレーニングを適用することで、リハビリの効果を高めることができると考えられます。

加圧トレーニングによる筋肥大の効果

下記URLより引用

参考:”Yasuda T, et al. Effects of low-intensity, elastic band resistance exercise combined with blood flow restriction on muscle activation. Scand J Med Sci Sports. 2014 Feb;24(1):55-61.”

パーキンソン病の患者に対するリハビリ効果も確認されている

加圧トレーニングは、健康な人が競技能力の向上や筋肥大を目的として行う場合も効果的ですが、研究機関や医療機関では何らかの疾病を抱えている患者のリハビリの効果を高めるために、加圧トレーニングの応用が注目を集めています。
先ほど紹介したように、加圧トレーニングによって筋肥大の効果が得られることは研究によって証明されていますが、リハビリ効果についてはまだまだ研究途上の段階です。

2018年にDouris氏らが発表した研究では、パーキンソン病の患者に加圧トレーニングを適用して、運動や歩行機能が改善するかをいくつかの検査項目で調査しました。
パーキンソン病とは、大脳内部が変性することで発生する疾患で、未だに原因不明の難病です。
初期症状は筋肉の緊張や震えから始まり、徐々に歩行や運動の機能が低下していきます。

その結果、加圧トレーニングを6週間続けているときは、運動機能に関する全ての検査項目で数値の向上が見られました。
しかし、それから4週間加圧トレーニングを停止すると、また元のように運動機能が低下していきました。
さらに、パーキンソン病の症状である「レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)」も、加圧トレーニングで改善することが分かりました。

パーキンソン病の症状の改善

下記URLより引用

参考:THE EFFECTS OF BLOOD FLOW RESTRICTION TRAINING ON FUNCTIONAL IMPROVEMENTS IN AN ACTIVE SINGLE SUBJECT WITH PARKINSON DISEASE

被験者は、何の悪影響もなく加圧トレーニングを楽しむことができ、様々な運動機能が改善することが分かりました。
この研究の結果によって、やはり加圧トレーニングは何らかの疾患で運動機能が低下している患者に適用すると、リハビリの効果を得られることが証明されました。
これからも様々な分野において、日本人が生み出した素晴らしいトレーニングテクニックの活躍が期待されます。

加圧トレーニングはフィットネスの世界に新たな道を切り開く

今回は、筋肥大やリハビリ等に素晴らしい効果を発揮する加圧トレーニングについて、次のポイントを詳しく解説してきました。

今回のまとめ

  1. 加圧トレーニングとは、専用のベルトで血流を制限してトレーニングを行うテクニック
  2. 加圧トレーニングは正座による足の痺れから、日本人のボディビルダーが考案した
  3. 加圧トレーニングは血流を制限することで、大量の乳酸が蓄積されて筋肥大効果が高まることが証明されている
  4. 加圧トレーニングでは大量の乳酸が蓄積するので、低強度でも速筋繊維を優先的に鍛えられる
  5. 加圧トレーニング行うと血管の機能性や柔軟性が高まり、血行や動脈硬化が改善される
  6. 比較的軽い負荷で効果を得られるので、正しく実践すれば安全性が高いトレーニング方法
  7. 加圧トレーニングは必ず専用の器具を使用して、有資格者による指導を受ける必要がある
  8. 加圧する圧力や時間を適切に設定する必要があるため、必ず指導者のもとで実施しよう
  9. パーキンソン病の患者に対するリハビリ効果も確認されており、様々な分野での応用が期待される

筋肉を大きく成長させるためには、高強度のウエイトトレーニングが必要だとこれまでは考えられてきました。

しかし、年齢や健康状態によっては身体に負担が掛かるトレーニングはできないため、筋肉量を増やすのはなかなか困難なことでした。

そこで近年大きな注目を集めているのが、低強度でも高い筋肥大効果を得られる加圧トレーニングです。加圧トレーニングには手軽にできないという難点がありますが、そのぶん正しい環境で行えば非常に高い効果を得ることができます。

加圧トレーニングには単なる筋肥大効果だけではなく、血管の機能性向上や動脈硬化の改善、さらには大量に分泌される成長ホルモンによる若返り効果など、様々な素晴らしい効果があります。

それだけではなく、パーキンソン症候群のような難病患者のリハビリにも効果的だということが証明されており、安全性に関しても保証されています。日本人が発明した素晴らしいトレーニング方法が、これからも様々な分野で活躍していくことが期待されています。

以上、「加圧トレーニングの素晴らしい効果を徹底解説!激しい筋トレと同じ効果がある?」でした!

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