筋トレを初めて、まず最初に使用するサプリメントといえば、プロテインではないでしょうか。
実際に、プロテイン(タンパク質)は筋肉繊維そのものの素材になるので、筋肥大に極めて効果的であると証明されています。
では、そんなプロテインと同じくらい効果的なサプリメントは何でしょうか?
そのひとつが、今回詳しく解説する「クレアチン」です。
クレアチンは、筋トレ愛好家が必ず使用すべきサプリメントのひとつで、科学的にもその効果は明らかだと証明されています。
しかし、こういったサプリメントに付き物な不安が「副作用」で、クレアチンは何やら身体に悪影響があるという噂もあります。
実は、そういった副作用に関する話は憶測や誤解に過ぎず、適切に使えばクレアチンが安全なサプリメントであることも証明されています。
クレアチンは、筋肥大に非常に効果的でありながら安全な、素晴らしいサプリメントなのです。
そこで今回は、筋トレへの効果が絶大なクレアチンについて、次のポイントを詳しく解説していきます!
この記事でわかること
- 筋肉が活動するためには、必ずエネルギーとして「ATP(アデノシン三リン酸)」が必要になる
- 筋肉中のATP含有量は極めて少ないため、必要なATPを合成する必要がある
- 筋トレでは、クレアチンリン酸系と解糖系からなる「無酸素系」で、ATPが合成されている
- クレアチンは、ATP合成に必要な「クレアチンリン酸」の素材となり、大半が骨格筋に貯蔵されている
- クレアチンの貯蔵量は体重70kgで約120gだが、最大160gくらいまで増やせると考えられている
- クレアチンを摂取すると、様々なトレーニングで強度を約3〜8%高められる
- 正常な摂取範囲内であれば、クレアチンには副作用の心配がないことも明らかになっている
Contents
クレアチンはATPの再合成を促進させる働きがあるので、筋トレのパフォーマンスが高まる
近年では、クレアチンが筋トレの効果を高めるサプリメントとして、注目を集めています。
プロテインには筋肥大の効果を高める働きがあったり、BCAAには筋肉の合成力を高めて分解を防ぐ働きがあったりします。
それでは、クレアチンにはどのような効果があるのでしょうか?
まずは、筋肉が運動するメカニズムについて、簡単に見ていきましょう。
筋肉が動くためのエネルギーは、すべてATPから供給されている
クレアチンはアミノ酸の一種で、体内で合成されてその大部分が「クレアチンリン酸」として、筋肉中に存在しています。
このクレアチンリン酸は、筋肉が収縮するときに必要なエネルギーである「ATP(アデノシン三リン酸)」の合成に使用されます。
筋肉が運動するために必要なエネルギーは、すべてATPから合成されています。
ATPは「アデノシン」と3つの「無機リン酸」から構成されているため、「アデノシン三リン酸」と呼ばれています。
このATPから1つのリン酸が離脱するときに、筋肉のエネルギーが生成されるのです。
しかし、筋肉にはごくわずかのATPしか備蓄されていないので、1秒程度の運動ですぐに枯渇してしまいます。
したがって、運動を続けるための「ATP再合成」の仕組みが必要になります。
ATP再合成のシステムには、クレアチンリン酸系・解糖系・有酸素系の3種類があります。
特に、クレアチンリン酸系・解糖系の2つは酸素を必要としないため、「無酸素系」と呼ばれています。
筋トレで重要になるのが、この無酸素系のATP再合成システムです。
筋トレでは無酸素系でATPの合成を行っており、筋肉中のクレアチン量が多いとパフォーマンスが向上する
クレアチンリン酸系は、筋肉にあるクレアチンリン酸が「クレアチン」と「無機リン酸」に分解するときに、発生するエネルギーでATPが再合成されます。
このシステムは最も大きなエネルギーを得られるため、高強度のトレーニングで活用されますが、わずか7〜8秒程度で供給が終了してしまいます。
解糖系では、筋肉中もしくは血液中にあるグリコーゲン(糖質の一種)を分解することで、ATPを再合成します。
グリコーゲンをピルビン酸に代謝する過程でATPが再合成されるのですが、同時に乳酸という疲労物質も生成されてしまいます。
こちらも大きなエネルギーを得られ、なおかつ30秒ほど続けて供給を続けられます。
これらの特徴からも分かるように、筋トレでは無酸素系であるクレアチンリン酸系・解糖系からATPを合成しているのです。
高い瞬発力が求められる高強度の運動では、それだけ筋肉が消費するエネルギー量も増えるため、クレアチンの消費量も多くなります。
筋トレの強度が高いとクレアチンも大量消費されるので、サプリメントで補うのが効果的
クレアチンは、クレアチンリン酸の元となる成分で、アミノ酸の一種です。
クレアチンのおよそ95%は骨格筋内に含まれており、リン酸と結合した「クレアチンリン酸」という形で、筋肉中に蓄えられています。
その他に脳や網膜などにも存在して、常にエネルギーを生成しています。
体内に貯蔵されているクレアチンは、体重70kgでおよそ120g程度だと考えられており、1日1〜2g程度が尿となって排泄されています。
クレアチン自体は、体内でアミノ酸から生成される成分でもあり、赤身の肉や魚介類に含まれてもいるため、通常は不足することがありません。
しかし、高強度のトレーニングを日常的に行っている場合は、消費されるクレアチンの量も多くなるために、食品だけでは必要な量を補いきれないことがあります。
そこで、クレアチンのサプリメントを活用することで、筋肉がより多くのクレアチンを活用できるようになるのです。
体内に貯蔵できるクレアチンは、最大160g程度だと考えられている
クレアチンは瞬発力を発揮する運動で、筋肉へATPを供給するために必要になります。
したがって、体内のクレアチン量が多ければ、それだけ多くのATPを供給できることになるので、筋トレにも有利だと考えられます。
1日1〜2g程度のクレアチンが体外へ排出されるということは、その分を毎日補う必要があるということになります。
通常はその半分を食事から摂取して、残りの分はアルギニンやグリシン、メチオニンなどのアミノ酸から体内で生成しています。
では、体内にどれくらいのクレアチンを貯蔵しておけるのでしょうか?
現在はまだ厳密なところまではわかっていませんが、最大160gくらいなのではないかと推測されています。
先ほど触れたように、体重70kgの男性では約120gのクレアチンが貯蔵されているので、まだ40g程度の余地があるということになります。
したがって、サプリメント等でクレアチンを補給して筋肉での貯蔵量を増やすことで、クレアチンリン酸系によるATPの再合成を促進して、筋トレのパフォーマンスを向上させられると考えられているのです。
ATP(アデノシン三リン酸)が使用されるときは1つのリン酸が離脱するため、ADP(アデノシン二リン酸)というエネルギーに変化します。
クレアチンはこのADPに作用して、再びATPを生成するという働きがあります。
つまり、クレアチンの働きによって、最大筋力を発揮する運動を何度も繰り返すことができるようになるのです。
クレアチン自体には筋肥大効果を高める働きはないが、トレーニング負荷の向上が役立つ
さて、プロテインやBCAAは筋肥大を促す効果のあるサプリメントですが、クレアチン自体にはそういった効果はありません。
クレアチンの最大の特徴は、エネルギーを作り出して筋力を増強することです。
筋トレの効果は、トレーニングの負荷で大きく変わります。
前述したように、クレアチンのサプリメントを使用すると、トレーニングの負荷を強めることができます。
したがって、筋肉により多くの刺激が伝わることで、筋肥大の効果を高められるのです。
クレアチンには、身体能力や運動パフォーマンスの向上、筋肉量の増加や脳の疲労軽減などの効果があります。
また、クレアチンサプリメントを摂取することで、運動中に生じる酸性物質(いわゆる疲労物質)である、水素イオンや乳酸を緩衝したり、これらの物質が発生しにくくしたりすることで、筋肉が酸性に傾いて疲労することを防いでくれます。
このように、筋トレの強度を高めることが、クレアチン摂取の主な目的です。
クレアチンの効果や安全性は、数々の研究で科学的に証明されている
以上のメカニズムが、クレアチンが筋トレの効果を高めると考えられている理由です。
しかし、こういったサプリメントには、どうしても胡散臭さを感じてしまうこともあるのではないでしょうか。
クレアチンのサプリメントを使用すると、本当に筋トレのパフォーマンスが高くなるのでしょうか?
クレアチンの摂取によって、様々なトレーニングで強度を3〜8%程度高められる
クレルモン・フェラン大学のLanhers氏らは、脚(2015年)と腕(2017年)のトレーニングに関するクレアチン効果の研究論文を発表しました。
その結果、スクワットやレッグプレスの強度を3〜8%程度高め、ベンチプレスやチェストプレスは約5%高めることが明らかになりました。
また、トレーニングの経験や性別、さらに年齢に関係なく、同様の結果が得られることも分かりました。
したがって、クレアチンのサプリメントを摂取すると、どんなトレーニングでも約3〜8%程度は強度(重量や回数)を高められることが、科学的な検証によって証明されているのです。
3〜8%というと微々たるものだと感じるかもしれませんが、筋トレは1回でもレップ数が上がると筋肉への刺激が確実に強まるので、決して軽視できない差です。
正常な摂取量であれば、クレアチンの副作用を心配する必要はない
クレアチンは効果の高いサプリメントであるため、副作用を心配する声もあります。
例えば、クレアチンの摂取による脱水症状や筋肉の痙攣、もしくは腎臓へのダメージなどです。
こういった疑問に関して、テキサスA&M大学のKreider氏らは、「クレアチンに副作用の心配はない」としています。
これまでに報告されたクレアチン摂取に関する数々の知見では、筋トレの経験や年齢に関わらず、具体的な副作用は報告されていません。
クレアチンで肉離れが起こったという話がありますが、そういった場合は栄養バランスの悪いことが多いようです。
体調不良をクレアチンでカバーするような使い方をすると、自然と様々な不調が出てしまいます。
クレアチンの摂取で注意すべきことは、水分摂取をしっかり行うことです。
クレアチンは筋肉中へ水分を引き込む作用があり、通常よりも必要な水分量が多くなるため、水分摂取はこまめに行うようにしましょう。
そうやって体内の水分量が増加するため、クレアチンを使用すると多少体重が増加しやすい傾向にあります。
こういった研究結果から、2018年に「国際スポーツ栄養学会(ISSN)」は、筋トレに効果的なサプリメントとして、クレアチンを「エビデンスA」としました。
エビデンスAとは、筋肥大とパフォーマンス向上の効果において、「明らかに効果があって安全であると証明されている」ことを示すものです。
クレアチンの摂取で「クレアチニン」の数値が上昇してしまうことがある
通常の摂取量であれば、クレアチンが腎臓に負担を掛けることはないと考えられています。
しかし、ひとつだけ留意しておく必要があるのは、血液検査の「クレアチニン」という項目の数値です。
クレアチンが消費された後は、クレアチニンという代謝産物(老廃物)が発生します。
血液検査のクレアチニンは、この老廃物の血中濃度を測定するものです。
クレアチニンは腎臓の働きによって濾過されるため、この数値が高くなると腎機能の低下が疑われます。
冒頭で説明したように、クレアチンは骨格筋に必ず含まれているため、常にクレアチニンが発生しています。
したがって、筋肉量が非常に多い筋トレ愛好家は、健康体でもしばしばこのクレアチニンの数値が高くなります。
さらに、クレアチンのサプリメントを摂取すると、自然とクレアチニンも増加するので、当然ながらクレアチニンの数値も正常値より高くなります。
しかし、これは腎機能が低下しているわけではないので、心配する必要はありません。
どうしても気になるなら、血液検査の1週間前からクレアチンの摂取を止めることで、正しいクレアチニンの数値を測定しやすくなります。
健康診断を受ける際は、この点について留意しておく必要があります。
クレアチンで筋トレの強度を高めて、筋肉により大きな刺激を与えよう
今回は、筋トレへの効果が絶大なクレアチンについて、次のポイントを詳しく解説してきました。
今回のまとめ
- 筋肉が活動するためには、必ずエネルギーとして「ATP(アデノシン三リン酸)」が必要になる
- 筋肉中のATP含有量は極めて少ないため、必要なATPを合成する必要がある
- 筋トレでは、クレアチンリン酸系と解糖系からなる「無酸素系」で、ATPが合成されている
- クレアチンは、ATP合成に必要な「クレアチンリン酸」の素材となり、大半が骨格筋に貯蔵されている
- クレアチンの貯蔵量は体重70kgで約120gだが、最大160gくらいまで増やせると考えられている
- クレアチンを摂取すると、様々なトレーニングで強度を約3〜8%高められる
- 正常な摂取範囲内であれば、クレアチンには副作用の心配がないことも明らかになっている
筋トレ愛好家は効果的な筋肥大を目指すために、プロテインをはじめ様々なサプリメントを使用しています。
しかし、クレアチンは筋肥大とは違う高い効果を発揮するサプリメントとして注目されています。
クレアチンを使用すると、筋肉の運動に必要なATPの再合成が促進されるので、筋肉のパフォーマンスが高まって負荷を強めることができます。
クレアチンの効果は科学的に証明されており、安全性に関しても問題ないことが明らかになっています。
ただし、クレアチンのサプリメントを使用する際は、必ず水分の摂取量を増やすようにして、身体の水分不足を防ぎましょう。
クレアチンで筋トレのパフォーマンスを高めて、さらに身体を大きくしていきましょう!
以上、「クレアチンは筋トレの強度を高める効果がある!メカニズムを科学的に徹底解説」でした!