ステロイドを使わないナチュラル・ボディビルの到達できる限界をFFMIから考える

筋トレを続けていると気になってくるのは、自分はどれくらいまで筋肉量を増やせるのか、ということではないでしょうか?
プロのボディビルダーの身体を見ていると、とても自分では到達できるはずがないと思って失望することもあるはずです。
しかし、ボディビルダーやフィジーク選手の身体にはカラクリがあるので、一般の筋トレ愛好家が到達できないのは当然のことなのです。

ボディビルやフィジークの選手はごく一部の団体を除いて、アナボリックステロイドと呼ばれる筋肉増強剤を使用するのが常態化しています。

ナチュラルで到達できる限界を知ることで、現実的な目標値を設定することができます。
そこで今回は、一般的にはタブー視されがちなボディビル業界の真実や、ナチュラルビルダーが到達できる限界について、次のポイントを詳しく解説していきます。

この記事でわかること

  1. 大半のボディビルやフィジークの団体はステロイドを容認しているため、ナチュラルな選手は少ない
  2. ボディビル業界においては身体の大きさこそが正義なので、ステロイドは悪徳ではない
  3. トレーニングをしなければ筋肥大は起こらないので、単にステロイドを使用してもマッチョになれない
  4. 筋肉量の増加速度は経験年数で変わり、理論的には3年間で約20kgの筋肉を増やせる
  5. FFMIは筋肉量を評価するための尺度として非常に分かりやすく、ドーピングを判断する指標にもなる
  6. ドラッグフリーのビルダーが到達できるFFMIは、最大でも25くらいだと考えられる
  7. ミオスタチンが全く発現しない異常体質がある人は、FFMIが27に達することもあり得る
  8. 筋トレを長期間楽しむために、ナチュラルなボディビルダーの身体を目標にしよう
  9. 一般の筋トレ愛好家はFFMI22〜23を目指せば、十分に逞しく美しい肉体を手に入れることができる
  10. ナチュラルに身体を鍛えることは大切だが、ステロイド使用者に対する過剰反応はやめよう
  11. トレーニングを楽しみ続けるためには、他人を意識しすぎたり批判したりしないことが大切

大半のボディビルやフィジークの団体はステロイドを容認している

一般的にはあまり知られていない事実かもしれませんが、ボディビルやフィジークの団体の大半は、「アナボリックステロイド」と呼ばれる筋肉増強剤の使用を黙認しています。
特に、世界で最も権威のあるボディビル大会であるミスターオリンピアのステロイド容認は有名な話で、出場選手の大半はステロイドを使用しています。

プロのボディビルやフィジークの選手はステロイドを使用している

一般的にはあまり知られていない事実かもしれませんが、大半のボディビルやフィジークの選手はアナボリックステロイドを使用しています。
アナボリックステロイドの主成分は、テストステロンに類似した物質であるため、体内で吸収されるとテストステロンと同等の働きをします。
テストステロンはアナボリックホルモン(タンパク質同化ホルモン)の一種で、筋肉の合成を促進させる効果があります。

したがって、ステロイドを使用すると筋肥大の速度が爆発的に高まるので、通常では考えられないサイズの筋肉を手に入れることができます。
しかし、現役の選手は絶対に自分がステロイドを使用しているとは認めませんし、団体側が反ドーピングをうたっていながらも、実際にはドーピング検査がなかったり抜け道だらけだったりするので、事実上ドーピングを容認しているに等しいのです。

なお、ごく一部の団体はドーピングを徹底的に取り締まっているため、ナチュラルなビルダーが所属しています。
そういった団体に所属しているビルダーの身体は、ステロイドを容認している団体の選手と比べて明らかに小さいので、ステロイドがいかに筋肥大の効果を高めるのかを暗に示しています。

ボディビル業界においてステロイドは悪とは見なされていない

一般的にはステロイドは悪い印象があり、ステロイドで楽して獲得した筋肉に意味はないと考えるのは、日本国内のみならず万国共通の意識です。
しかし、ボディビルの筋肉はステロイドを使用したうえで、毎日死ぬ気でトレーニングをする生活を10年以上続けて、ようやく手に入れられるものなので、決して楽して獲得したものではありません。

さらに、ボディビルの目的がそもそも「美しい肉体」を手に入れることなので、その目的を達成するためには手段も過程も選ばないというのが、ボディビル業界全体のコンセンサスとなっています。
したがって、ボディビル業界ではステロイドの使用は悪ではなく、むしろ美しい肉体を手に入れるために必要な手段となっているのです。

そもそも、美しい肉体とはいったい何のことなのでしょうか?
例えば、ひとくちに古代ギリシアの肉体美といっても、古典期には中性的な細身の身体が理想の男性像だと考えられていました。
しかし、ヘレニズム期になると肉体美の概念も変化して、筋骨隆々の逞しい肉体が理想的だと考えるようになり、神々を模した彫刻もそのように変わっていったのです。

このように、美しい肉体の基準は時代と共に移り変わるものであり、ボディビル業界でもそれは同じことなのです。

ちなみに、日本の偉大な芸術家である三島由紀夫は、ヘレニズム期の理想である筋骨隆々とした肉体を絶対的な美だと確信して、自身も古代ギリシアの神々のような肉体を目指しボディビルに励みました。

ボディビル業界の美意識も時代と共に変化してきた

現代のボディビルは異常なほどバルク(筋肉量)を重視する傾向があるので、ステロイドの活用はなおさら重要な要素となっています。
そういった、ボディビルの異常なバルク至上主義に対抗して誕生したのがフィジークですが、そのフィジークも近年では異常なバルク志向が高まっているので、実際には大同小異だというのが実状ではないでしょうか。

ところで、ステロイドの使用は悪ではないのに現役選手はステロイド使用を認めないというのは、非常に矛盾しているように感じられますが、そこには経済主義の現代社会の制約があるからです。
ボディビルの選手は業界の各種企業とスポンサー契約を結んでおり、それら企業は選手の名前で利益を得ているというwin-winの関係にあります。

したがって、その選手がステロイドを使用していることが明らかになると、選手も企業も不健全な印象を受けてしまうので好ましくありません。
実際に、ボディビルやフィジークの選手がステロイドの使用を公言すると、たとえ団体側がドラッグを黙認していても出場禁止になってしまいます。

いずれにせよ、ボディビルやフィジーク選手の大半はステロイドを使用しているので、一般の筋トレ愛好家がそのレベルに決して到達できないのはごく自然なことなのです。
ナチュラルな筋トレ愛好家が目指すべきなのは、あくまで完全にナチュラルなボディビルダーの肉体なのです。

ナチュラルビルダーの限界を考えていこう

ウエイトトレーニングをしている多くの人が気になるのは、このままトレーニングを続けると最終的にどれくらいまで筋肉量を増やせるか、ということではないでしょうか。
当然のことながら、まともなトレーニングメニューの作成や食事、睡眠の質や時間の管理をしなければ、どれだけトレーニングを続けても筋肉量はほとんど増えません。

筋肉量の増加速度はトレーニングの経験年数で変わる

トレーニングを始めた初心者の頃は、トレーニングをするたびに筋肉がどんどん成長していきますが、経験が長くなるにつれて筋肉の成長速度は鈍化していきます。
これは、筋肉量が増えるにつれて身体の限界に近付くためで、多くの筋トレ愛好家が経験したことがあるのではないでしょうか。

筋トレの経験による筋肉量の増加速度を、統計的に推測するための指標として有名なのが、アラン・アラゴンモデルと呼ばれるものです。
アラゴン氏はドラッグフリーのボディビルダーに関して、体重に対する割合で1ヶ月あたりで筋肉量がとれくらい増えるのか、おおむね次のような数値になると発表しました。

・初心者(筋トレ1年目)…体重×1〜1.5%
・中級者(筋トレ2年目)…体重×0.5〜1%
・上級者(筋トレ3年目)…体重×0.25〜0.5%

理論的には3年間で約20kgの筋肉を増やすことが可能

例えば、体重70kgの初心者は1ヶ月あたり0.7〜1kg増やせるので、1年後には体重80kgくらいの中級者となります。
筋トレ2年目は1ヶ月で0.4〜0.8kg増やすことができ、3年目に突入するころには体重87kgくらいの上級者となります。
それ以降は1ヶ月あたり0.21〜0.43kgしか増やせなくなりますが、3年目が終了するころには体重90kgくらいの筋骨隆々とした肉体になるでしょう。

つまり、トレーニング開始時に体重70kgの人が、質の高いトレーニングと食事や睡眠の管理を徹底できた場合は、3年間でおよそ20kgほど除脂肪量を増やすことができるということです。
ただし、一般の筋トレ愛好家はそれほど完璧なトレーニングはできないため、実際には5〜10年以上の時間をかけて20kgの筋肉量を獲得していくことになります。

また、いい加減なトレーニングを続けていると、たとえトレーニング経験が3年目であっても、上記の3年目の筋肉の増加速度は当てはまりません。
適切なトレーニング方法や栄養管理に切り替えた後は、トレーニング初心者と変わらない伸びしろが残っているかもしれないので、筋肉がどんどん成長することもあり得ます。

身体の限界値を推測するための計算機を活用しよう

前述したアラン・アラゴンモデルによって、自分がどれくらいのペースでどれだけの筋肉量を増やせるのか、体重を用いて簡単に推測することができます。
ただし、アラン・アラゴンモデルには個人の体格差を考慮していないため、正確さに欠けるという問題点があります。

そこで、自身の骨格を用いて正確な最大筋肉量や各部位のサイズを推定できるのが、ケイシー・バットモデルです。
バット氏は自身もドラッグフリーのボディビルダーで、他のビルダーの体格を徹底的に分析して、最終的に到達できる身体を推定できる計算機を開発しました。

バット氏が開発した計算機では、手首と足首の周囲径を入力することで、様々な情報の推定値を出してくれます。
ただし、アメリカ人が作ったものなので入力値も推定値も、全てがヤードポンド法になっているので注意が必要です。
1インチは2.54センチメートル、1ポンドは0.45kgなので電卓等を用いて変換しましょう。

ケイシーバットモデル

ケイシーバットモデルによって自分の最終的な筋肉量やサイズを推測出来る

例えば、身長170cm・手首17cm・足首22cm・体脂肪率15%という体型の場合は、計算結果が胸囲115cm・上腕41cmくらいになるので、最終的には相当に大きな身体まで到達できるということです。
ちなみに、ケイシー・バットモデルでは、身長180cmくらいまでは控えめな数値が算出されるので、地道にトレーニングを続ければ推定値に近いところまで成長できる可能性は高いです。

参考:The WeighTrainer Maximum Muscular Bodyweight and Measurements Calculator by Casey Butt

簡単に体格を評価できるFFMIを活用しよう

ドラッグフリーの筋トレ愛好家がトレーニングを続けると、最終的にどれくらいの肉体を手に入れられるのかについて、焦点を当てて解説してきました。
これからは、筋肉量を評価するための尺度として非常に分かりやすい「FFMI(Fat Free Mass Index)」について見ていきましょう。

ドラッグフリーのビルダーが到達できるFFMIは25だと考えられる

健康診断などではBMI(Body Mass Index)というシステムが活用されますが、これは身長に対する体重の割合を示したもので、一般的には22〜23が理想値だと考えられています。
ただし、BMIでは筋肉量と脂肪量の区別がつかないので、BMIが25を遙かに上回るボディビルダーはこの尺度では不健康ということになってしまいます。

1995年にKouri氏らが行った研究では、アナボリックステロイド使用者と非使用者を対象にFFMIを計測して、その数値を比較してFFMIの現実的な数値について考察しました。
その結果、ステロイド使用者の平均FFMIが約25であったのに対し、非使用者では22程度に留まりました。

この研究では、双方のグループで突出して高いFFMIを記録した者がおり、使用者は32で非使用者は25になりました。
ちなみに、被験者となったステロイド非使用者のグループには、ドラッグフリーのボディビルコンテストやウエイトリフティングの出場者や記録保持者など、極めて高いレベルの者が集められていました。
このことから、ドラッグフリーのボディビルダーの限界FFMI値は、おおむね25程度になるのではないかと考えられます。

参考:”Kouri EM, et. al.Fat-free mass index in users and nonusers of anabolic-androgenic steroids. Clin J Sport Med. (1995) 5(4):223-8.”

ステロイドが無かった時代のビルダーはFFMI27.3を記録している

さて、次は世界中で最も筋肉量が多い人がナチュラルで到達できる可能性のある、FFMIの限界値を考えてみましょう。

先ほど紹介した研究では、ドラッグフリーのボディビルダーが到達できるFFMIの限界値は、およそ25であるという結論が導き出されました。
しかし、世界のボディビルダーの頂点であるミスターオリンピアのFFMIを見てみると、さらに高い数値を記録した者が存在していたのです。

2009年にLyle McDonald氏が記述した記事では、過去のミスターオリンピアチャンピオンのデータを参照して、人間が到達できる最大FFMI値を考察しています。
まず、アナボリックステロイドの研究によって筋力増強に効果があると知られるようになったのは1940年代後半であり、量産が可能になって一般人も手に入れられるようになったのは50年代以降です。

そこで、完全にドラッグフリーだと考えられるボディビルダーを抽出するために、1939年〜1944年の優勝者のFFMI値を参考にしてみましょう。
その結果、この年代のチャンピオンの平均FFMI値は24.9で、最大値はなんと27.3にもなります。
つまり、筋肥大に最高の条件をもった者が到達できる可能性があるのは、FFMI値が27の肉体ではないかと考えられるのです。

ナチュラルビルダーのFFMI

最大値は1944年の27.3、平均は24.9程度となる 引用:下記URLより

参考:Fat-Free Mass Index in Users and NonUsers of Anabolic-Androgenic Steroids – Research Review

ステロイド使用者と共にナチュラルビルダーの体格も向上している

この考察については、近年のミスターオリンピアの優勝者が必ずしもステロイド使用者だとは限らないのだから、これらの情報からFFMIの最大値を考えるのは無意味ではないかという見方もあるかもしれません。
確かに、ウエイトトレーニングの手法は科学的になり、技術面についても様々なものが開発されました。
現在では、便利なサプリメントも数多く販売されているため、ナチュラルで到達できる限界も昔よりずっと高まっているかもしれません。

実際に、この数十年間で様々なスポーツの記録は飛躍的に向上していますし、1940年代のチャンピオンに引けを取らない体格のナチュラルビルダーもいます。
しかし、単にトレーニングの環境や技術の影響でバルクが大きくなるなら、年代ごとに漸進的に身体が大きくなっていくはずです。
ところが、ミスターオリンピアのチャンピオンは70年代後半から急激にバルクアップしており、この不自然な変化は明らかにステロイドによる影響だと考えざるを得ません。

また、ナチュラルビルダーの体格も昔よりは確実に大きくなっていますが、それは同時にステロイド使用者の体格も大きくなっていることを意味します。
現在の完全なドラッグフリー団体のボディビルコンテストに出場する選手が、ミスターオリンピアなどの選手より明らかにサイズが小さいことを考えると、やはり近年のボディビル選手の大半がステロイド使用者であると考えるのは妥当です。

FFMIはサイトで簡単に計測して体格を判断できる

FFMIは体重に対する筋肉量の割合を示すための指標で、自分の体格がどれくらいのレベルなのかを判断できます。
FFMIは専用のサイトを活用して身長・体重・体脂肪といったデータを入力することで、簡単に計測することができます。
計測結果のFFMI数値による体格は、おおむね次のように判断することができます。

・やせ型…FFMI17〜18、体脂肪率10〜18%
・平均体型…FFMI18〜20、体脂肪率20〜27%
・肥満体型…FFMI19〜21、体脂肪率25〜40%
・アスリート体型…FFMI20〜21、体脂肪率10〜18%
・筋トレ上級者…FFMI22〜23、体脂肪率6〜12%
・エリートビルダー…FFMI24〜25、体脂肪率8〜20%

例えば、身長170cm・体重75kg・体脂肪率15%という体型の場合は、FFMI22.6の筋トレ上級者となるため、これくらいの数値がおおむね限界値ということになるでしょう。
ちなみに、FFMI22くらいまでならトレーニングを続ければ到達できる領域だと考えられるので、ここで求められる数値を参照すると、あとどれくらい筋肉量を増やせるのか推測することができます。

例えば、同じ身長と体脂肪率で体重が70kgの場合は、FFMIが21.2なので、あと5kgは筋肉量を増やせる可能性が高いことが分かります。
逆に、体重が75kgの場合はFFMIがすでに22.6なので、それ以上筋肉量を増やすのはかなり難しいことを意味します。
なお、ナチュラルビルダーでありながらFFMIが25を超える場合は、ミオスタチンに異常がある特異体質なのかもしれません。

参考:FFMI Calculator

筋肉の成長を抑えるミオスタチンが全く発現しない者がいる

冒頭でも少し触れたことですが、筋肉の成長を抑制する「ミオスタチン」というタンパク質が存在します。
なぜこのような物質が存在するのかというと、筋肉が成長しすぎると生命維持の点で危険性があるため、筋肉の過剰な成長は抑制する必要があるからです。

ところが、先天的にミオスタチンに突然変異が発生して、筋肉量の増加を抑えることができない個体が存在していることが分かっており、なんと人間にもミオスタチンに異常のある者が確認されているのです。
ミオスタチンに異常があると、筋肉の成長を抑制する作用がなくなるため、通常より圧倒的に速いスピードで筋肥大が進み、最大筋肉量も常識では考えられないほど多くなります。

ただ、ミオスタチンが全く発現しない遺伝子をもつ確率は4万分の1だと考えられているので、意外と多くの人が驚異的な素質を持っているということになります。
これを先ほどの研究結果に当てはめてみると、ドラッグフリーでFFMI25を超えられるような人は、このミオスタチンが変異した遺伝子を持っているのかもしれません。

こちらの記事で筋肥大と遺伝子の関係についてまとめてあります。

参考:『筋肉の成長を邪魔するミオスタチンとは?(46〜47ページ)』ー「石井直方の筋肉まるわかり大事典」(石井直方著)

ナチュラルな筋トレ愛好家が目指すべき肉体を見てみよう

アナボリックステロイドを使用しないナチュラルなボディビルダーが、最終的にどれくらいの身体に到達できるのかを解説してきました。
それでは、今までの内容を踏まえたうえで、ナチュラルなボディビルダーが目指すべき身体について、実際のビルダーを例に挙げて見ていきましょう。

ナチュラルビルダーの肉体は極めて自然で美しい

冒頭で解説したように、現代のボディビルやフィジークの選手は、国内外問わず大半がアナボリックステロイドを使用しています。
そのため、ドラッグフリーの筋トレ愛好家が彼らのような肉体を目指したところで、絶対に到達できるはずがないのです。
無意味な目標を定めるのは自信や気力の喪失に繋がるので、筋トレを長期間にわたって楽しむためには正しい目標設定が必要です。

ところが、有名なビルダーにはステロイド使用者があまりにも多いので、いったい誰がナチュラルビルダーなのかを判断するのは難しいのです。
海外のボディビルダーの交流サイトでも、「誰がナチュラル(natty)で誰がステロイド使用者か」などという議論が盛んに行われています。
そこで、体格やFFMI値から判断すると、Mark Fitt(マーク・フィット)は明らかにナチュラルだと判断することができるでしょう。

Mark Fitt

ナチュラルな綺麗な身体をしているMark Fitt
引用:Greatest Physiques – MARC FITT

Mark Fittは現在29歳のカナダ人ボディビルダーで、フィットネスモデルとして精力的に活動しています。

身長はおよそ177cmで体重は79〜84kgなので、それほど大きな身体というわけではありません。
しかし、極めて自然でバランスが良いギリシア的な肉体なので、ナチュラルな筋トレ愛好家は彼の身体を目標にしてみると、努力次第で現実的に到達できる領域なので良いでしょう。

身長が低い人の方がナチュラルビルダーとしては圧倒的に有利

海外では靴を履いたまま身長を測定することが多いうえ、鯖読みもかなり多いので、人によっては5cm以上ごまかしていることもあります。
世界で最も有名なボディビルダーの一人であるシュワルツェネッガー氏は、公称身長185cmですが実際には178cmくらいだと言われています。
ボディビルダーは基本的に平均身長より背が低い人が多いのですが、ナチュラルビルダーでは特にその傾向が強くなります。

その理由は単純で、背が低い人の方が高い人よりも筋肉がつきやすく、横幅が大きく見えやすいからです。
背が低い方が筋肉も短いのでより重いウエイトで筋肉に刺激を与えやすく、さらに必要なカロリーやタンパク質の量も少なくなるので、効率的に筋肥大しやすい体質になります。
したがって、通常の体質では180cmを超えると、ナチュラルで大きな身体を手に入れるのは相当困難になるのです。

また、身体が大きくなると相対的に頭が小さく見えるようになるので、標準体型の人よりも遙かに背が高く見えます。
筋骨隆々で180cm以上あるように見える人が、実は170cmくらいだったということは決して珍しくありません。
このように、ボディビルでは身長も重要な要素になるので、背が低い人ほど筋トレをするメリットは大きいのです。

参考:『背の高い人は筋肉がつきにくい?(356〜357ページ)』ー「石井直方の筋肉まるわかり大事典」(石井直方著)

なぜボディビルダーがナチュラルかどうかの議論が絶えないのか

先ほど紹介した考察は、単にナチュラルビルダーの最大FFMI値を推測するためのものであり、ステロイド使用者を批判するためのものではありません。
しかし、ステロイド使用者がナチュラル志向者に厳しく批判されるのは、ネット上などで国内外問わず常に起こっていることです。
なぜ、ボディビルやフィジークの選手がナチュラルかどうかの議論や、ステロイド使用者に対する糺弾が絶えないのでしょうか?

まず最初に考えられるのが、身体に有害なものに対する嫌悪感で、これは愛煙家が嫌煙家に嫌悪されるのと同じようなものです。
確かにステロイドは筋肥大の効率を飛躍的に高めてくれますが、そのぶん身体への悪影響は計り知れません。
私たちは本能的に身体に害のあるものを嫌悪する性質があるため、不健全な印象のあるステロイド使用者は嫌われてしまうのです。

第二の理由としては、不正行為を行う者に対する嫌悪感で、カンニングを行った生徒が周囲から白い目で見られたり、ドーピングで失格になったアスリートが世間から糺弾されたりするのと同じものです。
現代のボディビル業界は、表面上はドラッグ禁止をうたっていながら、実際にはドラッグを容認しているため、そういった不誠実な体質が人々の嫌悪感を強めているのも事実です。

物事を正しく行おうとする意識が強い人ほど、不正な手段で結果を得た者への嫌悪感は強くなりがちです。
これは合理的に感じられるかもしれませんが、他人の行為を厳しく批判したところで自分が特に得られるものはなく、またその人の行動を変えられるわけでもないことを理解しておく必要があります。

トレーニングを楽しむために、他人を意識しないようにしよう

最後の理由は最もありふれていながら深刻なものですが、他人に対する嫉妬心から発生する嫌悪感です。
自分よりずっと身体の大きな人を見ると、たとえその人がナチュラルビルダーであったとしても、ステロイド使用者と断定したくなることがあります。

こういった嫉妬心はボディビル業界ではありがちなことですが、ウエイトトレーニングは本来は自分との闘いであるべきなので、他人のことを意識しすぎるとトレーニングを楽しめなくなります。
また、ステロイドを使用したくても実行できない人が、ステロイド使用者に対して感じる嫉妬心もあります。

例えば、毎日遅くまで残業する人が定時退社する人に対して怒りを募らせることがありますが、その理由は単に本当は自分もやりたいことをしている人に嫉妬しているからです。
いずれにせよ、詩人ヘルマンヘッセが「誰かを憎むのは自分の中にある同じものを憎むことだ」と説いたように、他人を過度に意識する弱さは克服する必要があります。

いずれにせよ、筋トレ愛好家にとって他人がどうあるかは、本来は全く関係ないことです。

ボディビルディングは他人ではなく自分自身と競うものなので、自分が理想の肉体に向かってトレーニングを楽しむことさえできれば良いのです。
他人の行動を意識する前に、まずは自分自身をしっかり見つめて、日々のトレーニングに取り組むようにしましょう。

適切な目標値を設定して、理想の身体を手に入れよう

今回は、一般的にはタブー視されがちなボディビル業界の真実や、ナチュラルビルダーが到達できる限界について、次のポイントを詳しく解説してきました。

今回のまとめ

  1. 大半のボディビルやフィジークの団体はステロイドを容認しているため、ナチュラルな選手は少ない
  2. ボディビル業界においては身体の大きさこそが正義なので、ステロイドは悪徳ではない
  3. トレーニングをしなければ筋肥大は起こらないので、単にステロイドを使用してもマッチョになれない
  4. 筋肉量の増加速度は経験年数で変わり、理論的には3年間で約20kgの筋肉を増やせる
  5. FFMIは筋肉量を評価するための尺度として非常に分かりやすく、ドーピングを判断する指標にもなる
  6. ドラッグフリーのビルダーが到達できるFFMIは、最大でも25くらいだと考えられる
  7. ミオスタチンが全く発現しない異常体質がある人は、FFMIが27に達することもあり得る
  8. 筋トレを長期間楽しむために、ナチュラルなボディビルダーの身体を目標にしよう
  9. 一般の筋トレ愛好家はFFMI22〜23を目指せば、十分に逞しく美しい肉体を手に入れることができる
  10. ナチュラルに身体を鍛えることは大切だが、ステロイド使用者に対する過剰反応はやめよう
  11. トレーニングを楽しみ続けるためには、他人を意識しすぎたり批判したりしないことが大切

ナチュラルで大きな身体を目指す筋トレ愛好家は、自分がどれくらい身体を大きくできるのかを過度に気にすることがあります。
ドラッグフリーでは到底到達できないような高い目標を設定すると、思ったように身体が成長しない現状に失望してしまうことがあります。
筋トレを楽しみ続けるためには、現実的に到達できる領域を知り、他人ではなく自分自身と闘う姿勢が大切です。

今回解説した内容を理解しておくと、ナチュラルな筋トレ愛好家が目指すべき目標を正しく設定することができます。
FFMI22〜23の体格は着実にトレーニングを続ければ誰でも到達できる可能性があるので、ナチュラルで逞しい肉体を目指したい方はそこに目標を定めると良いでしょう。
ドラッグフリーで健全に身体を鍛えて、自然で美しい肉体を手に入れましょう。

以上、「ステロイドを使わないナチュラル・ボディビルの到達できる限界をFFMIから考える」でした!

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