近年は糖質制限ダイエットの普及と共に、炭水化物を摂取すると太りやすくなるので、摂取量を控える方が良いと考える人が増えています。
しかし、筋肥大を目指してウエイトトレーニングを行っている場合は、炭水化物の摂取量を減らしてしまうのは問題があります。なぜなら、筋肉を大きく成長させるためには、体内の豊富な糖質の働きが欠かせないからです。
炭水化物はタンパク質と同じくらい筋肥大に重要な栄養素なので、むしろ必要な量は積極的に摂取していくべきなのです。
それでは、筋肥大に最も効果的な炭水化物の摂取量とは、いったいどれくらいなのでしょうか?
結論からいうと、トレーニング前後は「体重×1g」の炭水化物を摂取するとパフォーマンスが上がります。
今回は、筋肥大の効果を高める炭水化物の摂取量について、次のポイントを詳しく解説していきます!
この記事でわかること
- 炭水化物とは、植物の体内で作られてデンプンやグリコーゲンなどの形態で存在している栄養素
- 炭水化物は糖質と食物繊維が組み合わさったものだが、炭水化物と糖質は同じと考えてよい
- 筋トレでは糖質が主要なエネルギー源となるため、十分な炭水化物の摂取が欠かせない
- 筋グリコーゲンやダメージからの回復のためにも、炭水化物の力が欠かせない
- インスリンはアナボリックホルモンの一種で、分泌されることで筋タンパク質の合成作用が高まる
- インスリンが分泌されると、筋分解が抑制されて筋合成が促進されるため、筋肥大が促進される
- 筋肥大を起こすためには、身体がオーバーカロリーの状態であることが必須
- トレーニング前後に合計で「体重×1g」の炭水化物を摂取すると、パフォーマンスが高まる
- トレーニング中は炭水化物がエネルギー源として活用されるため、体脂肪は蓄積されない
- トレーニング後に食事をとる場合は、30分ほど時間を空けると安全に食事を楽しめる
- 1日に摂取すべき炭水化物は「体重×4〜6g」だと考えられるが、特に意識する必要はない
炭水化物とは?
炭水化物とは、植物の体内で作られてデンプンやグリコーゲンなどの形態で存在している、タンパク質や脂質と並ぶ三大栄養素のひとつです。炭水化物は糖質と食物繊維を合わせたものですが、炭水化物の大半が糖質であるため、炭水化物と糖質は同じものとして扱われます。
私たちが運動するためには炭水化物の力が欠かせない
ウエイトトレーニングで筋肉を鍛えるためには、単にトレーニングを激しく行うだけでは効果がありません。むしろ、トレーニングよりも「栄養摂取」の方が大事だと言われるくらい、栄養をいかに効果的に摂取するかは筋肥大の極めて重要な要素です。
タンパク質を十分に摂取すべきだというのは有名な話ですが、それだけではなく炭水化物の摂取も必須です。
炭水化物は糖質と呼ばれることもありますが、炭水化物の大半が糖質であり食物繊維はごくわずかなので、基本的には炭水化物と糖質は同じ意味に捉えて構いません。
私たちが運動するときはエネルギーが必要ですが、その主要なエネルギー源となるのが炭水化物です。
特に、高強度のウエイトトレーニングではその重要性が増します。
つまり、ウエイトトレーニングを行うときに十分な炭水化物を摂取していなければ、筋肉がエネルギー不足となって十分なパワーを発揮できなくなります。さらに、エネルギー不足の状態でウエイトトレーニングを行うと、エネルギーを作り出すために筋肉を分解するので、大切な筋肉量が減ってしまうこともあるのです。
近年では、ダイエットのために糖質制限が有効だと言われているため、とにかく炭水化物を減らす食生活を続ける人が増えています。
確かに、糖質制限はダイエットに大きな効果があることは証明されているのですが、ウエイトトレーニングを行っているときはその例外です。体内の糖質が不足するとパフォーマンスが低下するため、筋肥大を目指す場合は糖質制限を行ってはならないのです。
筋肉のダメージから回復するためにも炭水化物が欠かせない
高負荷のウエイトトレーニングを行うことによって、筋繊維が刺激されてダメージを受けるため、身体は修復作業を行う必要があります。
筋肉が修復された後に元のサイズよりも少しだけ大きくなるのが筋肥大の正体で、その行程は超回復と呼ばれています。このときに欠かせないのが、十分なタンパク質と炭水化物の摂取なのです。
炭水化物つまり糖質を摂取すると、体内でインスリンと呼ばれるホルモンが分泌されます。
筋肥大の効果を高めるためには、実はトレーニング後のインスリン値が高い方が好ましいのです。なぜなら、インスリンは成長ホルモンやテストステロンと並んで、身体のアナボリズム(タンパク質同化作用)を高める「アナボリックホルモン」の一種だからです。
インスリンには体内に消化吸収された炭水化物やタンパク質を、筋肉へ送り届ける作用があるため、インスリンのレベルが高いと筋肉への栄養素の供給効率も良くなります。
また、インスリンの分泌量が多くなることは身体のアナボリズムが高まることも意味しているので、成長ホルモンやテストステロンなどの分泌量も高まるのです。
これらのことから、トレーニング終了後も十分な炭水化物を摂取しておくことが望ましいと考えられています。
インスリンの分泌によって筋タンパク質の合成作用が高まる
炭水化物はタンパク質と共に、筋肉が大きく成長するために欠かせない栄養素です。
なぜ炭水化物の摂取が筋肥大に有利に働くのか、筋肥大のメカニズムという観点から見ておきましょう。やや専門的な話になってしまいますが、詳しいことを理解しておく必要はありません。
ウエイトトレーニングを行うと筋肉は強い刺激を受けますが、それによって「mTOR(エムトア)」というタンパク質が活性化されて、筋肉の合成作用が強まります。
その一方で、身体は空腹を感じると「FOXO(フォックスオー)」と呼ばれるタンパク質が活性化され、筋肉を分解するコルチゾールなどのホルモンを分泌させて、筋肉のタンパク質からグリコーゲンを絞り出す「糖新生(とうしんせい)」が起こります。
さて、炭水化物を摂取すると膵臓から分泌されるインスリンによって、体内に消化吸収された糖質に対応します。
分泌されたインスリンは血液を流れて筋肉に送り届けられ、筋肉中のインスリン受容体が筋繊維にその情報を伝えます。
筋肉がインスリンの情報を受け取ると、「PKB(プロテインキナーゼB)」という物質が活性化して、前述したmTORに働きかけて筋肉の合成を促進させます。
PKBにはFOXOを抑制する働きもあるので、筋肉の分解を抑制して筋肉の合成を促進させることにも繋がります。
要するに、炭水化物を摂取するとインスリンが分泌され、それによって活性化するPKBがmTORに働きかけてFOXOを抑制することにより、筋分解が抑制されて筋合成が促進され、筋肥大が発生するということなのです。
このことを証明するために、Fujita氏らは被験者を若年者と高齢者のグループに分け、さらにトレーニング直後にタンパク質のみを摂取するグループと、炭水化物(40g)も加えるグループに分けました。
その結果、どちらのグループも炭水化物を摂取した方が、筋肉の合成速度を高められるという結果が出ました。なお、この実験では炭水化物の摂取量は40gに設定されましたが、多ければ良いというわけではないので注意が必要です。
体脂肪を増やさずに筋肉だけ増やすのは難しい
筋肥大を発生させるためには、摂取カロリーが消費カロリーを上回っていることが必要です。その理由はごく単純で、摂取カロリーに余分がなければ、筋肉を成長させるためのエネルギーを生成できないからです。
筋肥大のためには大量のエネルギーが必要ですが、当然ながらエネルギー供給の最優先はまず生命維持にあり、余剰分がようやく筋肥大にまわされるのです。
現在は糖質制限が注目を集めており、ダイエットや減量のためには糖質の摂取量を減らすべきだと考えられています。
そのため、余計な体脂肪をつけずに筋肉量だけ増やすためには、タンパク質の摂取量を増やして炭水化物を減らせば良いと言われていますが、残念ながらそれは大きな間違いです。
言い換えれば、体脂肪を増やさずに筋肉量だけ増やすというのは、ほとんど不可能な話だということです。
前述したように、筋肥大のためには炭水化物を摂取することによるインスリンの働きが欠かせませんし、身体がオーバーカロリーの状態でなければ筋肥大はほとんど発生しません。
リーンバルクやクリーンバルクなどのテクニックを活用して、可能な限り体脂肪を増やさずに筋肉を増やすことはできますが、それでも体脂肪は必ず増えますし、筋肥大のスピードはかなり遅くなってしまいます。
トレーニング前後は合計で「体重×1g」の炭水化物を摂取しよう
筋肥大を推し進めていくためには、タンパク質と共に炭水化物も十分に摂取する必要があることが分かりました。
それでは、実際にどれくらいの炭水化物を摂取すれば、筋肥大に効果的になるのでしょうか?まずは、トレーニング時に摂取すべき炭水化物の量について、詳しく見ていきましょう。
ウエイトトレーニングでは炭水化物が主要なエネルギー源となる
筋トレ講座等では、トレーニング前は炭水化物を必ず摂取すべきだと言われていますが、それは炭水化物が運動時の主要なエネルギー源となるからです。
脂質もエネルギー源となるのですが、高強度のウエイトトレーニングでは主に炭水化物が優先的に活用されます。
それは、炭水化物は筋肉のエネルギー源である「ATP(アデノシン三リン酸)」を素早く生成できるという特性があるからです。
ATPを生成するための方法は、クレアチンリン酸系・解糖系・酸化系の3種類のものがあります。
最も高いパワーを発揮できるのがクレアチンリン酸系ですが、こちらはエネルギーを7〜8秒しか供給できません。
ウエイトリフティングや100m走のような短時間で超高強度の運動を行うには最適ですが、1セットに数十秒ほどかかるウエイトトレーニングには適していません。
そこで、筋肉に貯蔵されている筋グリコーゲン(糖質)を活用することで、ATPを生成するのが解糖系です。
こちらも大きなパワーを発揮することができますが、エネルギーの供給時間も30秒くらいに引き延ばすことができます。
クレアチンリン酸系ほどのパワーは出ませんが、最大筋力の70〜80%くらいで行うウエイトトレーニングには十分なので、筋トレでは解糖系が大活躍するのです。
トレーニング前の炭水化物摂取はパフォーマンスを高める
トレーニング時に体内の糖質量が不足していれば、筋肉へのATP供給も十分に行われません。
そうなると、トレーニング中に発揮できるパワーや持続力が低下するので、レップ数が思うように伸びなくなってしまいます。
ウエイトトレーニングではいかに総負荷量を高めるかが重要になるので、レップ数の停滞は筋肥大効果の停滞に繋がります。
逆に言うと、トレーニング前に炭水化物をしっかりと補給しておけば、トレーニング時の筋肉のパフォーマンスを高めることができるということです。
Krings氏らが2016年に行った研究では、20歳前後の男性被験者を集めて、ベンチプレスやベントオーバーローイングなどの主要なトレーニング種目を行うときに、炭水化物の摂取がパフォーマンスにどのような影響を与えるのかを調べました。
その結果、炭水化物を摂取しておくとこれらの種目の最終セットにおけるレップ数が増加するため、トレーニングの総負荷量を高められることが分かりました。
ただし、こういった効果を得られるのはあくまで「筋肥大」を目標とした中〜高強度のトレーニングを行う場合であり、「筋力」の向上を目指す超高強度では炭水化物を摂取してもパフォーマンスは向上しません。
トレーニング後の炭水化物補給にも大きな意味がある
近年の研究では、タンパク質を十分に摂取していれば、こういったインスリンの働きによる筋肥大効果はそれほど高まらないため、特に炭水化物を意識して摂取する必要はないという研究結果も報告されています。
これは、先ほど紹介したFujita氏らの研究報告と矛盾しますが、筋トレ後にタンパク質と合わせて炭水化物を摂取しても、筋タンパク質合成の促進と分解の抑制効果は、それほど高まらないという研究があるのも事実です。
しかし、トレーニング後に炭水化物を補給する目的は、単に筋肥大の効果を高めるだけではありません。
高強度のウエイトトレーニングでは、炭水化物が主なエネルギー源として活用されるため、筋肉中に貯蔵されている筋グリコーゲンも消費されます。
この筋グリコーゲンや筋肉の損傷からの回復に、炭水化物が大きな役割を果たすことが明らかになっています。
2007年にBaty氏らが行った研究では、トレーニング後に十分な炭水化物を摂取した場合、筋肉の損傷レベルがどのように変化するのかを調べました。
21歳前後の被験者らを2つのグループに分けて、全身を鍛える同じトレーニングメニューを行った後、片方では炭水化物とタンパク質の飲料を摂取して、もう一方では単なる人工甘味料の飲料(プラセボ)を摂取しました。
その結果、炭水化物を摂取したグループはそうでないグループと比べて、運動24時間後のコルチゾールやクレアチンキナーゼのレベルが有意に低下していたのです。
コルチゾールはストレスホルモンの一種で筋肉を分解する働きがあり、クレアチンキナーゼは筋肉の炎症具合を示すため、これら数値が低いのは筋肉の損傷による炎症や分解が少ないことを意味します。
つまり、トレーニング後に十分な糖質を摂取することで、筋肉の損傷からの回復が早まることが示唆されているのです。
トレーニング前後に摂取する炭水化物は、合計で体重×1.0gくらいが目安
これまで解説してきたように、トレーニング前後に炭水化物を摂取すると、トレーニングのパフォーマンス向上や、筋肉のダメージ回復の促進など、様々なメリットがあることが分かりました。
しかし、具体的にどれくらいの炭水化物を摂取すれば良いのかは、あまりはっきりと示されていないのが現状です。ここでは、現在公式に示されている見解を元にして、概ね効果的だと思われる数値を考察してみましょう。
ACSM(American College of Sports Medicine、アメリカスポーツ医学会)が2012年に示した公式見解によると、運動中は1時間で30〜60gくらいの炭水化物を摂取すると、高いパフォーマンスを保てるとしています。
これは、体重で換算すると「体重×0.5g」くらいになるので、体重70kgの場合はおよそ35gの炭水化物を摂取すれば良いでしょう。
ただし、トレーニングの1時間でこれらの炭水化物を全て摂取したとしても、体内で消化吸収されるまでには時間が掛かるため、パフォーマンスを高めるには効果的ではありません。
そこで、トレーニングの30分前からトレーニング終了までのトータルの炭水化物摂取量を、「体重×1.0g」と考えてみるのがオススメです。
これは、トレーニング前とトレーニング中に摂取する「体重×0.5g」と、トレーニング後に摂取する「体重×0.5g」をまとめたものです。同じ量を摂取するなら、少しずつ持続的に糖質を供給する方が、体内で効果的に活用できるようになります。
ほとんどの場合で、トレーニング時の炭水化物の補給はカーボドリンクやスポーツドリンクなどで、水分補給と同時に行うはずです。
つまり、あらかじめ300〜400mlの水分に「体重×1.0g」の糖質を混ぜたドリンクを作っておき、トレーニングの30分前からトレーニング終了時までに全て飲むようにすると、パフォーマンス向上に必要な炭水化物を十分に補給でき、筋トレ終了後の筋肉の回復もサポートできます。
カーボドリンクについてはこちらの記事も参考にしてください。
トレーニング中の糖質は体脂肪になる可能性が低い
前述したように、トレーニング前から終了時にかけて、「体重×1.0g」の糖質を水分と一緒に補給するようにすれば、トレーニングのパフォーマンスを高く保てると考えられます。
しかし、糖質の摂取量が多いと体脂肪の蓄積も増えてしまう、という懸念もあるのではないでしょうか。
実際には、トレーニング時の摂取量が上記の範囲内であれば、体脂肪が蓄積してしまう心配はほとんどありません。
トレーニング中および筋トレから1時間以内は、「GLUT4」と呼ばれる糖質輸送体が活性化している状態なので、糖質は筋肉にどんどん運ばれてエネルギー源や筋グリコーゲンとして優先的に活用されます。
そのため、十分な糖質を摂取しても体脂肪が増えてしまうことはないので、心配する必要はありません。
逆に言えば、減量期などで糖質制限を行っている場合でも、トレーニング前後は積極的に炭水化物を摂取しても、ダイエットにはさほど影響しないのです。
ただし、いくらトレーニング時の糖質補給とはいえ、筋肉で使い切れないエネルギーはやはり余分なものとなり、体脂肪として蓄積されるので注意が必要です。
「体重×1.0g」以上の炭水化物は摂取しても意味がないばかりか、体脂肪蓄積の原因になってしまうと思われるので、過剰摂取しないように摂取量を調整しましょう。
トレーニング後に食事をとる場合は、30分ほど時間を空けよう
これまで解説してきたように、ウエイトトレーニング完了後にカーボドリンクやスポーツドリンクなどで炭水化物を補給しておくと、筋肉の回復を早めることができると考えられています。
しかし、トレーニング後にしっかりした食事をとる場合は、食事から炭水化物を摂取できるので、特に意識してドリンクなどで炭水化物を補給する必要はなく、前述したトレーニング時の「体重×0.5g」の炭水化物で十分です。
ただし、昼食や夕食の前にトレーニングをする場合は、それから食事を摂ることになるのですが、トレーニング終了後すぐに食べてしまうのは良くありません。
トレーニング中は筋肉へ血液が集中するため、胃腸などの消化器官の血流が低下して胃腸の機能も不完全になります。
胃腸の機能が低下しているときに食物を摂取すると、消化不良を起こして腹痛や吐き気の原因になってしまいます。
したがって、トレーニング後に食事をとる場合は、筋トレ完了後20〜30分ほど経過してからにする方が良いでしょう。
それくらいの時間を空けると、胃腸の機能も十分に回復しているので、しっかりして食事をとっても消化吸収がスムーズに行われます。
また、トレーニング直後のプロテイン摂取タイミングも、食事と同じタイミングにずらすとホエイによる満腹感に邪魔されることなく、食事をスムーズに食べやすくなります。
1日に摂取すべき炭水化物は「体重×4〜6g」だと考えられる
実際のところ、タンパク質とは違って1日あたりにどれくらい摂取すべきかという基準は、あまり厳密に考えられていません。
タンパク質は1日あたりに「体重×1.5〜2g」を摂取すべきだと言われていますが、炭水化物はトレーニング前後の摂取量が重視されているからです。
ここでは、1日あたりに摂取すべき炭水化物の量を、これまでの内容を踏まえて考えていきましょう。
炭水化物とタンパク質の摂取量比は「3:1」が望ましい
炭水化物とタンパク質を合わせて摂取すると、インスリンの働きによって摂取したタンパク質が効率的に筋肉へ送り届けられます。
さらに、筋分解を抑制して筋合成を促進させるため、筋肥大の効果を高められることが分かりました。
それでは、1日あたりどれくらいの炭水化物を摂取すれば、筋肥大の効果を最大限に高められるのでしょうか?
ISSN(国際スポーツ栄養学会)の発表では、炭水化物とタンパク質の摂取量比を「3:1」にすると、グリコーゲンの回復を促進して筋肉痛を軽減することができるとしています。
1日に摂取すべきタンパク質量が「体重×1.5〜2g」であることを考えると、炭水化物の摂取量はその3倍である「体重×4〜6g」くらいではないかと考えられます。
これを元に体重70kgの場合に摂取すべき炭水化物量を考えてみると、1日に摂取すべき炭水化物は280〜420gということになります。
しかし、具体的にどの食品をどれくらい摂取すれば、この目標値を達成することができるのでしょうか?
食品ごとの炭水化物摂取量は次のようになっているので、日々の食事メニューや間食と照らし合わせてみましょう。
- 白米…(茶碗1杯150gあたり約55.2g)
- 食パン…(6枚切り1枚60gあたり約26.6g)
- パスタ…(1人前80gあたり約57.0g)
- そば…(1人前200gあたり約48.0g)
- うどん…(1人前250gあたり約52g)
- バナナ…(1本100gあたり約21.4g)
- 大福(1個100gあたり約50.4g)
- ようかん(1切50gあたり約33.5g)
- ショートケーキ(1個100gあたり約43.0g)
- カステラ(1切50gあたり約31.3g)
- ポテトチップス(1袋60gあたり約30.3g)
なお、これらの数値は炭水化物そのものの含有量なので、厳密な糖質量を示すものではありませんが、ほとんどの食品は食物繊維の含有量はわずかなので、炭水化物の含有量は糖質量と同じだと考えて問題ありません。
これを元に考えると、1日3食でお茶碗1杯分のご飯を食べればそれだけで170gになり、さらにトレーニング中に摂取する70gの糖質zも合わせれば240gに到達します。
さらに、主食以外の食品や間食などからも相当量の炭水化物を摂取できるので、通常の食生活を送っていれば300gは簡単に摂取できます。
むしろ、日本人の食生活は元々炭水化物の摂取量が多すぎる傾向にあるので、1日あたりの炭水化物摂取量を考える必要は特にないのです。海外でPFCバランスがほとんど重要視されていないのも、そもそも正常な食生活を続けていれば自然と健康的な栄養バランスになるからです。
炭水化物をしっかり摂取して、筋肥大の効果を高めよう
今回は、筋肥大の効果を高める炭水化物の摂取量について、次のポイントを詳しく解説してきました。
今回のまとめ
- 炭水化物とは、植物の体内で作られてデンプンやグリコーゲンなどの形態で存在している栄養素
- 炭水化物は糖質と食物繊維が組み合わさったものだが、炭水化物と糖質は同じと考えてよい
- 筋トレでは糖質が主要なエネルギー源となるため、十分な炭水化物の摂取が欠かせない
- 筋グリコーゲンやダメージからの回復のためにも、炭水化物の力が欠かせない
- インスリンはアナボリックホルモンの一種で、分泌されることで筋タンパク質の合成作用が高まる
- インスリンが分泌されると、筋分解が抑制されて筋合成が促進されるため、筋肥大が促進される
- 筋肥大を起こすためには、身体がオーバーカロリーの状態であることが必須
- トレーニング前後に合計で「体重×1g」の炭水化物を摂取すると、パフォーマンスが高まる
- トレーニング中は炭水化物がエネルギー源として活用されるため、体脂肪は蓄積されない
- トレーニング後に食事をとる場合は、30分ほど時間を空けると安全に食事を楽しめる
- 1日に摂取すべき炭水化物は「体重×4〜6g」だと考えられるが、特に意識する必要はない
近年では、糖質制限ダイエットなどの流行で糖質は肥満の元だと考えられるようになっているため、糖質の摂取量を減らす人が増えています。
しかし、ウエイトトレーニングで筋肥大の効果を促進させるためには、炭水化物の力が欠かせません。
炭水化物を摂取することによって分泌されるインスリンの働きで、筋タンパク質の合成が促進されるのです。
具体的には、トレーニング前後に合計で「体重×1g」の炭水化物を摂取すると、トレーニングのパフォーマンスを高めることができて、トレーニング後の筋グリコーゲンや疲労の回復を早めることができます。
炭水化物は通常の食事を摂取していれば十分に補給できるので、PFCバランスなどを特に考える必要はありませんが、一応は「体重×4〜6g」の摂取量を目安にしておきましょう。
炭水化物を積極的に摂取して、筋肥大の効果をどんどん推し進めていきましょう。
以上、「筋肥大や筋トレに必要な炭水化物の摂取量はどれくらいが正解か」でした!